第7話 堕蛇、町に着く
日が傾き始めた時、バクはようやくオームの町に着いた。彼女はずーっと慣れないウォーキングをさせられて疲れ果てていた。
オームの町は道の脇に立ち並ぶ出店、行き交う多くの人、最初の町とは比べ物にならない程に騒がしく活気に満ち溢れていた。その活気が今のバクには眩しく感じれ、一人で町を歩くだけでも、かなりの精神的苦痛である。
早く宿屋に泊ってゆったりしたいバクであったが、その前にやることがあった。
それはこの町の防衛をしている騎士団の所に行って、『神の鎖』を手に入れることであった。騎士団には話が通っていて、バクはトニオに書いて貰った証明書を持っている。それさえ見せれば『神の鎖』が手に入るのだから、ここは転生者の役得といったところだろうか。
騎士団の屯所は町の中心の所にあり、どの建物よりも堅牢で立派であったが、バクはイマイチ好きになれなかった。屯所が自己顕示欲の塊の様に見え、また昔の自分を思い出してしまったのである。
バクはブルーな気持ちになりつつ、屯所の大きな扉の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。するとドアの一部がパカリと開いて、そこから鎧を着た男が顔を見せた。
「このオーム騎士団の屯所に何か用か?」
ちょっと高圧的に男がそう言うと、バクはチッと舌打ちを一つしてから証明書を見せた。
「転生者のバクだけど、早く『神の鎖』をくれないかしら?」
「あっ、転生者様でしたか。それはそれはお疲れ様です。ウチの騎士団長を呼んできますので少々お待ちください」
先程とは打って変わって態度が良くなった男。どうやら、この世界では余程転生者は優遇されているらしい。まぁ、自分達に降りかかっている脅威を解決してくれるかもしれないという期待からの優遇かもしれないが、今のバクには都合の良い特権であった。
男が居なくなり、扉の前でバクが2分ほど待つと、男がチョビ髭の頭がやたらフサフサした人相の悪い男を連れてきた。
「どうもお初にお目にかかります。私の名前はワン・マン。この町の騎士団長をしている男です。どうぞお見知りおきを」
ワンが頭を下げた時に少し髪の毛が浮いた気がして、バクはワンがカツラを付けていることにすぐに気付いた。どうもこの世界のカツラは精度が低いらしい。ちょっと笑いそうになったバクだが、『神の鎖』を貰うまでは失礼なことは出来る限りしない方が得策と考え、笑うのをグッと堪えた。
「そ、そういう挨拶は良いから、早く『神の鎖』ってヤツをくれないかしら?」
「左様でございますか?では『神の鎖』がある場所に案内します」
そう言うとワンは手下の騎士二人を連れて外に出てきた。ワンの全身が見え、鎧を着ているのにメタボの下っ腹が隠せていないのが何ともおじさんといった感じだ。バクが前の世界でワンを見掛けたら確実に「キモい」と一言吐き捨てていたことだろう。まぁ、そんなことより今は『神の鎖』である。
「『神の鎖』は別の場所に保管してるの?」
「えぇ、実は少し言い辛いんですが、今は凶悪な罪人を拘束するのに使ってまして、鎖はその罪人の入っている牢獄にあるんです」
「凶悪な罪人?」
わざわざドラゴンを封じ込めていた鎖で拘束しないといけない程の罪人が居るのか?とバクは首をかしげたが、相手は鎖をくれると言っているのだから、別にその点においては追及する必要は無いと考えた。
「それではコチラです」
ワン達の後を付いて歩くバク。心なしか町の人のワンを見る目が怯えているようにも見えたが、そんなことをイチイチ気にする心の余裕は今のバクには無かったのである。
堕蛇転生〜噛ませ犬から成り上がれ〜 タヌキング @kibamusi
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