第3話 決意

 その後も、彼女は度々高崎たかさき家を訪れた。家庭教師の先生として、度々我が家を訪れた。そして、当然のごとく両親は不在で。


 ……もう、流石に理解できた。これが、僕の役目なのだと。少しでも高崎家を支えるべく、僕に課された役目なのだと。……うん、そう思えばなんてことはない。むしろ、僕なんかの身体を差し出すだけで役目それを全うできるのなら、大変もったいなく有り難いくらいで。……だけど――



『――俺は、絶対にお前を嫌いになったりしないし、絶対に離れたりしない』



 そう、この上もなく真摯な表情かおで告げる同級生の言葉。……ありがとう、瀬那せなくん。こんな穢れた……それも、まさに直前、あんな酷いことを言い放った僕なんかに。……そして……ごめんね、父さん、母さん。……だけど、僕はもう――



「…………はぁ?」

「…………へっ?」



 卒然、思考が停止する。……えっと、なんで? なんで、そんな怖い声を……そんな、怖い表情かおでこっちを見るの? 


「なめてんの? あんた。知ってると思うけど、こっちはあんたの両親おやと契約してんの。そして、もう金銭かねも渡してんの。あんたの都合でキャンセルとか効くわけないでしょ」

「……あ、その、お金ならあります! なので、僕からお返ししま……あ」 

「はぁ? 要らないわよ、そんな端金。金銭かねなんていくらでもあんのよ。あたしに貢いでくれる男なんていくらでもいるから」


 慌ててそう伝えるも、差し出した手を鋭く弾く晴香はるかさん。バイトで貯めた、十数枚の紙幣を掴んだ手を。よもや、僕なんかの身体に大金を払っているとは思わないものの、こういう相場は全く知らないので一応多めに用意したつもりなんだけど――


「……っ!!」


 直後、背筋が凍る。卒然、僕の股間――正確には、陰茎をガシリと掴まれたから。逃げなきゃ――そう思うのに、身体がピクリとも動かない。その間にも、一度手を離し慣れた手つきでさっと僕のベルトを外す晴香さん。そして――


「――ほら、こんなに反応しちゃってる。いつもみたいに、お姉さんとキモチイイことしよ?」

「……いや、あの、その……」


 そんな言葉と共に、僕の性器を――ズボンも下着も下げられ剥き出しになった僕の陰茎を愉しそうに弄る晴香さん。そして間もなく、彼女自身のスカート――次いで下着を脱ぎ去り、そして――


「――ほら、挿れて?」


 そう言って、自身の性器――膣口を指差す晴香さん。その目はさながら、獲物を目にした狩人ハンターで。そんな彼女に対し、僕は――



 ……嫌、だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――




「――よう、お楽しみのところ悪いな」


「…………へ?」









 








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