第48話 Determination

退屈な授業が終わり、やってきた放課後、スマホのメッセージだけ確認すると、俺は荷物をまとめて教室を出て、とぼとぼと歩いて校舎の外に出る。下校時間。学校を出ていく生徒たちでごった返す中、校門手前のロータリーで、一人の女子生徒の姿が見えた。他の生徒と変わらない、普通の格好。目立たないはずなのに、背丈や顔立ちで、正体はすぐに分かった。だから、俺は何のためらいもなく近づく。距離が縮まるにつれて、輪郭がよりはっきりしてくる。間違いない。そして、いまならはっきり自信を持って言える、俺の彼女。安西麻衣美がそこにはいた。俺が声を掛ける。

「マイちゃん、待った?」

「はーくんは間違えないね。さすが、アタシの彼氏だよ。」

中身は相変わらず、明るく元気だった。

俺たちは普通に駅に向かって歩き出す。

「はーくん、バス乗らないの?」

「今日はいいや、つーか、歩きも悪くないって、最近は思えてきたよ。」

「いいじゃん、健康になったんじゃない。」

まあ、だいぶ体力はついたとは思う。マイと出会った頃と比べて、この点は大きな進歩だろう。そもそも俺は健康体だ。持病もない。不摂生も偏食もない。ないのは、運動神経だけだ。

「まあ、体の調子はいいよ。」

ただ、体力はもうちょっとあってもいいと思った。この間のことで、もう少し頑張ってもいいかなという気になった。

歩きながら、いつしか話題は、マイのイメチェンについて、になる。彼女が言った。

「ギャルファッションは好きだよ。でもね、はーくんと一緒にいる時、ちょっと良くない視線感じてたんだ。」

「俺は、あんまり気にしてなかったけどね。」

「初めはアタシがこうしたいからだけでもよかった。でも、はーくんは気にしないと言ってくれても、周りはそんなふうに見てくれてないように思えたんだ。」

「そこまで……。」

「はーくんともっと一緒にいたい、仲良くしたいって気持ちだけじゃ駄目だ。周りからも文句言われないように幸せになりたいって思ったら、もうこだわるのやめようってなった。」

「なんか、ごめん。」

謝るのはよくないって言われてはいたけど、マイの葛藤に寄り添えなかった。分かってあげることができなかったことが、俺は悔しくて、思わず言ってしまった。

「あとね、はーくんと出会う前は、強く見せたいって思いでやってたけど、はーくんがいるから、強がる必要ないかなって言うのもあるよ。」

「まあ、俺はそんなに強くはないよ。でも、ちゃんと守ってあげたいとは思ってる。そこは頑張るよ。」

格好付けた言い方になってしまった。でも、マイは、笑いながらも、

「ありがと、時々は頼らせてもらうね。」

と言ってくれた。

「あ、もしかして、はーくん前のほうがよかったとかあるの?」

言葉で表すのが、難しいが、丁寧かつ率直に俺は言った。

「服装はどっちでもいいんだ。でも、興味がないとかそういうんじゃなくて、ギャルな感じのマイもいいし、今の格好も可愛い。甲乙つけがたいってやつだ。でも、俺はマイのことを見た目で好きになったわけじゃないから。」

彼女が、真剣に俺の言葉に耳を傾けているのが分かった。

「だから、俺はマイがどんなファッションになっても受け止めるよ。あんまりだったら、やめたほうがいいとは言うかもだけど。」

そこまで言ったら、ちょっと照れくさくなった。でも、彼女はちょっと目を潤ませながら言った。

「はーくん大好き。もう、アタシははーくんだけでいい。絶対離れないから。一途だからね。」

「分かった。俺もマイのこと離さないから。」

そんなやり取りをして、少し経ってから、

「なんか恥ずかしいな俺たち。」

「さすがにね。アハハ。」

俺たちは再び歩きだした。



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