第4話 Afterschool 2

マイと俺が歩き出した駅へと向かう道、バスの通り道とほぼ同じだ。毎日通っているのに、初めて通る道のように思えた。行き方でこんなにも変わるのかと、新鮮な気持ちだった。そして、何より、一人ではなく、彼女が一緒にいること、これがこの道のりを行くことをより新鮮なものにしている。

何の根拠があるのかわからないが、体力に自信があるという彼女の足運びは軽快で、運動神経のなさは折り紙付きの俺は、付いていくのが、正直しんどい状態だった。しかし、彼女は汗一つかかず、涼しい顔で、ずっと俺に話しかけているのだ。

「はーくん。頑張ってよ。」

しんどさがかなり頂点に達しつつあった俺は、ついこんな言葉が、口をついて出てしまう。

「ごめんね。本当に体力なくって。」

この状態に気がついたマイは、

「うわ、本当にしんどそうだね。こっちこそごめんね。」

申し訳なさそうに言いながら、俺のそばまで戻ってきた。

「アタシ、いつも一人で歩いてたから、ひとのペースとか、全然考えてなかったよ。ダメだね。」

今まで、ここを歩いていくのに、誰かを気遣う必要がなかったのなら、仕方ないとは思う。しかし、俺の体力のなさもあんまりすぎる気がして、こっちも不甲斐ないというか、申し訳ない気持ちになった。

でも、そんな俺を気にかけてくれている、彼女の優しさも感じた。

俺は、両膝に両手を置き、大きく息を吐いてから、勢いよく体を起こす。

「もう大丈夫。頑張るから。」

彼女に向けて言うと、

「わかった。でも、あんまり無理しちゃだめだよ。あと、アタシもできるだけゆっくり歩くね。」

と、優しく答えた。そして、俺たちはゆっくりと、再び駅への道を歩き出したのだった。

それから、どの位歩いただろうか。俺たちの目の前に、馴染みの駅舎が姿を現した。駅前広場にちらほら見える、学校の生徒の姿に、もう何本かのバスがここまで来ているのがわかり、時間の経過をうかがわせた。

「着いたね。やっぱ結構時間かかっちゃったね。」

どう考えても、俺の体力のなさが原因だ。

「申し訳ない。」

今日何回目の謝罪だろうか。自らの情けなさをこれほど痛感したことはない。それでも、マイは引き続き俺に気を使ってくれた。

「だーかーらー、いちいち謝んないでよ。アタシが自分のいつものペース過ぎただけだし、こう見えて、スポーツ万能系だし。」

言われてみると、そんな気がする。もちろん見た目ではわからないのだが、言葉に謎の説得力があった。







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ぼっち陰キャとギャルがどうにかなる話 もりのさつき @dawninmay

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