第3話 Afterschool 1

「君、この間、テラスで本読んでた人だよね。」

彼女は確認のためなのか、そう尋ねてきた。

「そうだけど、もしかして君はあの時の……。」

ギャルといいそうになり、そこで止めた。が、

「あはは、こんなカッコだし、どう見てもギャルだよねアタシ。」

彼女は明るくギャルを肯定した。

「良かったら少し話そうよ。」

俺にそれを断る理由はなかったから、応じようと思ったが、バス待ちの列にいたし、どうしたものかと考え始める。

「あ、何か用事あるなら別に無理しなくても……。」

と彼女がいっていたが、俺は彼女と会える機会は中々出来ないのを感じでいたから、思い切って、バス待ちの列を出た。

俺は彼女の正面に立った。短いスカート、着崩した制服、明るい髪色。何故か、じっと見てしまう。正面から見るのは考えてみたら初めてだ。濃くしてあるまつ毛の奥の瞳は華やかな全体と比べて、妙に透き通っていた。周りの様子をきにすることを俺はすっかり忘れていた。

「ちょ、恥ずかしいんだけど……。」

俺は、漸く我に返り、

「あ、本当にごめんなさい。」

そう言うしかなかった。

「別にいいよ。何か、変な感じしなかったし。」

少し、周りが気になってきたので、場所を変えようと思った。その時、俺は、彼女が誰なのかが全く知らなかったことに気がついた。

「えっと、君、名前、聞いてなかったね。」

「そうだね、てか、そっちのこともアタシ知らないじゃん。教えてよ。」

取りあえず、名前を交換することになった。

「ふーん、はるとくんっていうんだね。アタシ、安西麻衣美、言いにくいからマイって呼んでね。」

「わかった、宜しくマイちゃん。」

「うあー、ちゃん付け恥ずい。でも、まあいっか。そっちのことははーくんって呼んじゃうね。」

「えっ、それも恥ずかしいなあ、でも、いいやそれで。」

こうして、お互いの名前交換が終了。次の話題へ、

「さて、俺は、バスで駅まで帰ろうとしていたわけだが、マイちゃんはどうしてるの?」

「アタシ?駅まで歩く!」

「歩くのか?」

「お金もったいないし、アタシは若いから大丈夫。今日は疲れてないし、だから歩く!」

マイは何だかポジティブな感じで言う。

「いや、俺はバスの定期券あるから……。」

静かに俺が返す。

「定期?ブルジョア?甘えるな。歩くのだ!健康のためだ。はーくんそれじゃ太るぞ、だから歩こう、一緒に。」

マイはそう言うと俺の腕を引っ張ると、駅方向へ俺を引きずって歩き出そうとした。

「痛い!わかった。今日は歩くよ。だから、離して!」

「やったあ!それじゃ行こ。着いてきて!」

そうして、駅へ向け俺たちは歩き出したのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る