第2話 Reunion

それからしばらく、彼女の姿を、俺は見ることはなかった。あれだけの見た目であるのに、一度も見かけないものだから、時が過ぎるに連れて、あの時の少女は、もしかしたら、夢幻のようなものだったのではないか、という考えが段々強くなっていった。

昼休みは、いつもの知り合いと過ごしていた。とは言え、彼とは大した話もしない。よく考えたら、何で一緒にいるんだろうか?そんなことを考えていたら、いつもならまずしないような言葉を俺は思わず口走っていた。

「なあ、うちの学校って、ギャルっぽい子いたっけ?」

「あ?どうした急に?」

彼がそういうのも仕方ない。しかし彼は、そこそこお人好し、それでいて、俺より校内事情には何故か詳しかったりする。

「うーん、ギャルか?あ、そういや一人だけいたなあ、本当に一人だけ。」

どうやら、この学校に恐らく、一人ギャルっぽい子がいるようだ。しかも一人だけだという。それは、派手めな身なりで、嫌でも目立つはずなのに、この学校で、陰キャな俺以上のマイノリティであるがために、あまり目立つことなく校内に棲息しているとうことなのかもしれない。

「それが、どうかしたのか?」

まあ、当然聞いてくる訳だ。隠していても、しょうがないから、俺は言った。

「いや、この前一人で本読んでたら、そんな感じの子に話しかけられてさ。」

「へえ、そりゃ珍しいな。」

彼は、俺のことを思いのほかよくわかっているとつくづく思った。俺は、異性はおろか、同性にすら話しかけられることなどない。

「この学校にああいう子がいるとは思わなかったよ。ただ、見た目はああでも、性格とかはあまり尖った感じはなさそうだったなあ。」

俺がそんなふうに帰すと、彼はそれ以上彼女のことに突っ込んでくることはなく、話題は緩やかに流れていった。

知り合いと過ごすのは、決まって昼休みのみで、放課後も一緒に過ごすことはあまりない。たいていは一人で家に帰る。特に部活などはやっていない。どこかの文化系同好会に所属だけはしていたと思う。一度も参加していないから、気づけば、何の同好会だったのかもほぼ忘れてしまった。

授業が終わると、最寄り駅へ向かうバス乗り場へ真っ直ぐに向かう。バス停で待つ生徒の列は、まだ数人もいなかった。取りあえず後ろにつくと、俺は、読みかけのラノベを取り出し、読み始めた。まだ数ページも読み進んでいなかったが、その時、ありえないことが起こった。肩を叩かれたような気がしたので、俺はゆっくりと振り返る。

「ねえ、今時間ある?」

そこにいたのは、数日前の昼に出会った、あのギャルっぽい格好をした女子だったのである。


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