ぼっち陰キャとギャルがどうにかなる話

もりのさつき

第1話 Encount

これは、陰キャぼっち少年である、俺、高柳陽人の身に起きた出来事の記録のようなものである。

 性格も明るくない、趣味もネットゲームと漫画を読むくらいだ。友達はほとんどいない。

 その日の昼は、共に過ごすはずの数少ない友人があろうことか、風邪で休んでいたので、俺は大急ぎで母親に持たされた弁当をかきこむと、すぐに、昼休みだけ開放されるテラスへ向かった。

 テラスにある小さなベンチで座って、持ってきていた新刊のラノベを読むためだ。一人の昼は大体こうやって俺は過ごしていた。

 テラスに到着すると、ベンチはまだ空いていた。すぐに腰を下ろし、オレは持ってきた本を広げ、読み始めた。

しばらくすると、ベンチが少し揺れた。誰か座ったらしい。何かいい匂いがしたような気がした。

気になって、そちらを見た。女子生徒が座っていた。

彼女は制服をかなり着崩していて、髪の色は茶髪を通り越して、赤、いや金色に近かった。この学校は自由な校風ではあるが、ここまでのいわゆるギャルっぽいのは、今まで見たことがなく、珍しさから、しばらく彼女に目がいってしまっていた。

すると、俺の視線に気づいた彼女が言った。

「は、何?」

びっくりしたのと、何か恐怖のようなものを感じた俺は、思わず、

「あ、いや、何でもないです。ごめんなさい。」

そう答えると、予想と反して彼女は、

「ちょ、別に謝んないでよ。こっちこそ邪魔してごめんね。」

と、言ってきた。俺は、少しホッとしつつも、無言で軽く頭を下げてから、再び読書を始めた。

その後しばらくお互い静かにしていたが、彼女が、俺に声をかけてきた。

「ねえ、それって面白いの?」

俺は、答えた。

「うーん、まだ読み始めだから、よくわかんないなあ。」

それを聞いて、彼女は、

「へー、そうなんだ、なんかごめんね。」

と言うと、続けて、

「本読むのって、楽しいの?」

さらに畳み掛けてきた。俺は、

「正直わかんないなあ、暇つぶしだね。」

その答えを聞いた彼女は、

「なるほどね。なんかありがと。」

と、言って少し笑った。俺も少し表情を緩めた。そのついでに腕の時計を見る。昼休みの終わりがかなり近づいていた。

「そろそろ教室に戻るよ。」

俺が言うと、彼女も

「じゃ、わたしもボチボチ戻るね。」

と言った。そして、一緒にベンチを立ち上がり、テラスを後にした。さいごの分かれ道で、彼女が、

「また、話しかけてもいい?」

と、言ってきたので、俺は、迷惑だとも思わなかったし、むしろ、ちょっと楽しいとさえ思っていたから、

「いいよ。また会ったらね。」

そう返すと、

「わかった、ありがと、じゃーね。」

と彼女は言って、手を振りながら歩いていった。

俺は、何だかその姿を可愛らしく思って、しばらく眺めていた。が、すぐに我に返り、教室へと駆け出した。

どうにか、授業に間に合ったものの、しばらく俺は、ゼーゼー息をしながら授業を受ける羽目になってしまったのであった。


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