第3話 ステータス獲得①



 川辺、伊波と予期せぬパーティー結成が決まり、飲み会でそのまま今後の打ち合わせを進めた。


 酒が入っていたのもあって、善は急げと明日にでもダンジョンに行く勢いだったが、さすがにそう都合よくいかない。


 探索者になるには、必要書類をしかるべき場所に提出するなど、幾つか手続きを踏まないといけない。


 それについては数日で準備を終えたが、最も重要なイベントに時間がかかった。


 日本探索者協会による、初心者講習会。 講師からダンジョンの知識、心構えを聞かされ、協会が用意した護衛付きでステータスの取得をするものだ。


 探索者の資格を得るにはこの講習会の受講が必須なのだが、こればかりは自分の都合では受けられず、指定された日時は飲み会から二週間も先になった。

 

「逆に時間が空いて良かったかもな。冷静になった上で、改めて覚悟が決まったし」


「そうだな。実を言うと俺、あれから三日くらい悩んだわ。死ねば家族に迷惑かけっかもなって。死んだ後のことはどうでもいいかって、開き直ることにしたけどな」


 笑いながら言う川辺に同意しかない。

 似たようなことを考えたが、自分の欲求に嘘はつけん。そして結論も同じだった。両親を悲しませないよう、最大限頑張るだけだ。


 と言うか、さすがに翌日探索は浮かれすぎだったな。やったら確実に死んでいた。酒の勢いって怖い。


 そんな俺たちを見て、逆に驚いたかのように伊波は言う。


「なんだ君たち。そんな半端な覚悟だったのか? 僕はそんなこと考えすらしなかったぞ。むしろこの日が早くこないかとウズウズしていたくらいだ」

「親不孝にも程があるだろ。少しは家族のこと考えてやれよ」


「安心しろ。親孝行なら孫の顔を見せることで果たす。異種族の嫁との間に出来た可愛い子供のな!」


「ほう。可能性がほぼゼロに等しいって言うことを除けば完璧な計画だな」

「万が一に叶う頃にはもう親御さんは亡くなってるんじゃねえの? 寿命で」


 俺もそう思う。こいつの愛に応える女がいるかって以前に、そもそも異種族の女性って絶対数が少ないんだよ。


<種族進化>の明確な条件も分かってない上に、最低でもレベル五十だぞ? そこのところ分かってんのかなこいつ。


 普段は冷静な男なんだが、やはりコイツが一番舞い上がっている。女とはこうも容易く男を変えるから恐ろしい。……俺は気をつけよ。


 んふふふふ、と気持ち悪い笑みを浮かべている伊波に一抹の不安を抱きつつ、俺達は目的地に辿り着く。


 東京で最も初心者向けと呼ばれている<渋谷ダンジョン>。 そのすぐ側に設立された日本探索者協会、渋谷支部。


 他の支部でも講習は受けられるが、危険度の低さから都内の講習を受けるならここ一択とまで言われている。


 安全は何よりも優先される。その分、混んでいるらしいが背に腹は変えられない。と思っていたが……。


「思った以上に人が多いな」

「だよな? っていうか若くね?」

「大学生くらいの子ばかりだな。大人も居るには居るが、僕らを除くとほんの数人だ」


 支部のエントランスには、伊波の言う通り学生らしき子達が、何人かで集まってはしゃいでいる。


 友達同士で固まっているのかもしれない。皆、協会が指定しているように、動きやすいジャージかスポーツウェア姿をしている。溢れ出る若さの輝きが眩しい。


 おかしい。条件は俺達も同じはずなのに、あの輝きはどこに行ったんだろう?

 いや、元々あんなものは持ってなかったか。俺達は所詮、闇属性側の人間よ……。


 元大学職員だからか、伊波はこの状況に思い至った。


「そういえば、来月には夏休みシーズンだったな。休みを全てダンジョンに当てる為に、今の内に資格を取りに来たのかもしれないな」


「ちっ、バイト感覚できやがって。こっちは本業にしようってのに、ダンジョンを舐めてるのか? 未来ある有望な若者が命かけてんじゃねえよ。死んだらどうする気だ!」


「妬んでるのか心配しているのかはっきりしろ」


 見た目はキモいデブオタのくせに、良識的なやつめ。


 一応、日本では成人であれば誰でも探索者になれる。そして比較的安全な階層でも収入が良い。その為、最近では浅い層を探索する大学生が増えているらしい。


 成人しているとはいえ、危険な場所に若者を入れるのはどうなのだという意見もあるが、この辺りはやはり若い子の方が柔軟だ。


 安全地帯に引きこもって、やれ野蛮だやれ暴力的だと口を出すだけの老害共とは違い、欲張らず弁えていれば、お手軽で高額なバイトとして人気が出ているらしい。


 実際のところ、若い方が体も動くし探索者に向いてるんだよなぁ。


 浅い所の素材もまだまだ需要があるし、そもそも国として――というか、人類共通の課題として探索者を増やさないといけない。学生だろうと探索してくれる人間はありがたいのだ。だから尚更止められない。


 とはいえ、せめて違う日にしてほしかったな。これではオッサンな俺らが浮く。


「うわ、学生ばかり。私、浮いてるじゃん。やっぱりやめれば良かったかな」

「そんなことないよ。お姉ちゃんだって若いよ」


 同じことを考えた奴が居るのかと、ついつい声がした方に顔を向けてしまう。 そして思わず息を呑んだ。


 すぐ傍に、二人の女性が居た。


 一人はまだ若い女性。といっても、大学生というには顔立ちが大人っぽい。かといって俺らほどではないだろう。二十半ばといったところか?


 ショートヘアの切れ長の目の美人で、少し近寄りがたい空気を持っている。ビシッとスーツを着こなせば、俺には一生縁のなさそうなバリキャリに変身するだろう。だが、今は黒のレギンス、短パンにスポーツウェアと、他の人達と変わらない恰好なのだが。


 ――でっか……!


 つい口に出てしまいそうになるほど大きい胸。いや、大きさももちろんなのだが、形が凄い。綺麗に前に突き出ている。これはいわゆるロケットおっぱいとかいうやつでは? 


 ネットで見たことはあるが、現実でこの大きさと形だとここまでの迫力になるとは……エロイとかじゃなく、もはや畏れ多い。見るだけで金を取られそう、とはこのことか。


 この女性だけでも凄いというのにもう一人、小柄な女の子がいる。


 ロケットさんとは違い頭一つ分小さく、やや幼さを感じる可愛らしい顔つきだ。大学生というにもなお幼く見える。……まさかとは思うが、高校生か?


 フワッとした髪を肩くらいまで伸ばし、こちらは目元がはっきりして、ちょこちょこ構ってほしそうな小動物的空気を感じる。ついついこっちも警戒を解いてしまいそうな子だ。色違いのピンク色で、格好もほぼ一緒なのだが。


 ――デッッッ?!?!?!


 ロケットさんを上回りそうな、ドンッ、迫力のある胸。背が小さい分、なおさらそう見える。というか確実にデカいよな?! あの身長で?! マジで?! 


 その分、相応に重力を感じさせるが、とても柔らかそうだ。どちらが良いかは好みだが、俺としては甲乙つけがたい。


 何なのこの子達? えっ? 本当にリアルの人間? アニメの世界の住人じゃないの? こんなドスケベボディが実在したの?


 それだけの魅力に溢れ過ぎたペアだった。実際、ここに居る男達のほとんどが、遠目で彼女達を見ながらひそひそと会話している。


 いや、やべぇだろ。ハッキリ言ってこんな所に居ていい子達じゃねぇよ。若い内から探索者になりたい奴なんてろくでもないバカ野郎ばっかりだぞ。トラブルが目に見えてるじゃんか。


 俺のような常識のある人間ばかりじゃないんだぞ。……でもまぁ、見るだけなら許されますよね?


「そりゃ私だってまだ若いつもりだけど、アンタと比べたら――あの、何ですか?」

「えっ? ……いや、別になんでもないですけど?」


 嘘だろ。さり気なく盗み見ていただけなのに気づかれた? この人、鋭すぎるだろ。


 不機嫌そうに睨んでくるロケットさんに、目を逸らして誤魔化す。やばい、ここからどうすればいいんだ? まさか痴漢扱いされないよな!?


「お待たせいたしました。講習会に参加の皆様はこちらへどうぞ」


 まさしく天の助けだった。内心焦りまくっていた時、講習が始まると職員が伝えに来た。


 ロケットさんは数秒ほど俺を睨み、チッ、と舌打ちして会場に向かっていく。そしてもう一人の女の子もトコトコとその後ろをついていった。

  

「怖かった。人生終わったかと思った……」


 その背を見て、ほっと胸を撫でおろす。

 そんな俺に、川辺がからかうように言ってくる。


「運が良かったな。痴漢で捕まってもおかしくなかったぞ」

「いや、冤罪だろ。なんだったら法廷でも勝てるレベル」


「あれだけ舐め回すように見ておいて何を言ってるんだ? 見るハラも十分にセクハラになるんだぞ」


 嘘だろ? トータル十秒も見てないのにそんな扱いされんの?


 世間の常識に戦慄する俺に、伊波は呆れたように首を振る。


「胸が大きければ見境ない。巨乳好きはこれだから救えない」

「いや待て待て! アレはしょうがないだろ?! 見てたのは俺だけじゃねぇよ?! 皆見てたって!」


「呆れて何も言えないよ。君はダンジョンに何を求めて来たんだい?」

「うるせぇ! お前にだけは言われたくねぇよ!」


「まぁ、楓太の気持ちは分からんでもねぇよ。俺でさえ目が行っちゃったし。おっぱい星人ならなおさらだろ。でも俺らもいい歳だし、せめて俺みたいにもう少し落ち着こうぜ。な?」


「お前は自分の性癖から外れているから興味がなかっただけだろ。一緒にするなよロリコン不審者」

「ロリコンじゃねぇよ! いや、ロリは好きだがそれは二次元だけだわ! 俺だってリアルは普通に大人の女が好きだっつの!」


 わりかしマジに否定する川辺。そうだな。確かにまだ手も出してないのに不審者扱いはひどすぎた。


 しかし、リアル云々のくだりは相当怪しい。こいつのロリに対する執着は、そういうキャラが好きだけでは説明がつかない熱がある。正直、明日にでもニュースに出てもおかしくないと思っている。

 

「ロリコンだろうがおっぱい星人だろうがどちらでもいいが、公共の場で醜い争いはよせ。見苦しいにも程がある」


 伊波に促され、イラっとしつつも素直に従う。オッサン三人が大声で争う姿は確かに見苦しい。


「それでは、ただ今より講習を始めます。まず初めに~」


 会場で席に着き、配られた資料に目を通しながら講師の話を聞く。


 内容はまず、現在判明しているダンジョン、ステータスの仕組みから始まる。そして探索者同士の争いは御法度、ダンジョンではなるべく助け合いましょう。そういったマナー的な話がほとんどだ。


 真剣に探索者を目指そうという奴ならとっくに知っていることであり、今さらな内容なのでほとんど聞き流すことになった。


 本気の眠気に襲われそうになってきたところでようやく、講習が終わる。そしてこの講習の本命――ダンジョン探索の時がやってきた。


「それではこの後、ステータスの取得になります。お名前を呼ばれた方から順にこちらへどうぞ」


 いよいよか。そう思うと緊張してくる。

 そんな俺とは違い、川辺は呑気そうな声でひそひそと話す。


「なんか五人ずつ呼ばれてるな。なんでだろ?」

「単純にそのくらいの人数がちょうどいいからだと思うが……ふむ、もしかしたらこの時点でパーティーを決めてるのかもしれないな」


 パーティーって……ああ、そういうことか。


 ゲームでパーティーの人数に制限があるように、この世界のダンジョンにも制限がある。いろいろと調べた結果、どうやら六人までがパーティーとして数えられ、それ以上となると成長できないそうだ。


 護衛役がパーティーに一人混ざるはずだから、残りは五人と考えれば伊波の話も辻妻が合う。


 ということは、俺らの場合は三人組で申請しているから、二人知らない人が混ざるということか。


 ……二人?


 講習開始前に出会った奇跡のおっぱいさん達も、二人。ということは、これはあれか? 偶然行動を共にすることになった女性がその後、ヒロインになっていくという鉄板のあれか?


 まさか、さっきの出会いはフラグ? 運命だったということか?!


 ――なんていうことはなく、おっぱいペアはあっさり若い男三人と共に呼ばれて部屋から出て行った。なんだったら和やかに会話しながら出て行った。


 そして俺らは、なぜか他と違い三人だけしか呼ばれなかった。


「何故だ……俺と彼らとで何が違うのだ?」

「君が何を考えていたのかはあえて聞かないことにして、別に三人ならそれはそれで構わないだろう」

「知らない奴らと混ざってやる方が面倒だよな。命がけなのに他人に気なんか使ってられねーし」


 まぁ確かにその通りだな。本気で期待していたわけでもないし。やりたいようにやれると喜んでおこう。


「では、ご希望の方はこちらでお好きな物をお選びください」


 案内された部屋には、様々な武具、防具が種類ごとに整頓され並べられている。男の子なら見ているだけでワクワクしてくる光景だ。


 初心者講習会では武具の無料レンタルも可能であり、希望者はこうして好きな物を借りてダンジョンに潜ることが出来る。


 装備も無しにダンジョンには入れないが、武術経験もないのに高額な装備なんか買ってられないからだ。武具にはフィーリングもあるだろうし、買って駄目でしたとなったら目も当てられない。僅かな時間といえ好きな物を試せるこのシステムは本当にありがたい。


 ちなみに、ここに在る物は全てダンジョン素材ではなく、現代の科学素材と技術で作られているものだ。基本的にダンジョン素材で作られた物の方が性能は良いが、浅い層であればこれでもまだ十分らしい。借りれるだけでありがたいし、レンタル品に文句は言えない。


「とりあえずは公式おすすめの初心者セット。防具は小手と脛当て。それから防刃ベストだよな」


 確認するように言う川辺に頷く。


 軽く、それでいて最低限の防御力のある装備だ。一般人が使える実戦的な装備は実質これくらいらしいので、ここまでは迷う必要がない。


「だな、あとは盾を持つかどうかだけど……」


 俺と川辺は微妙な顔で伊波を見る。

 伊波はウキウキとしながら盾を選んでいた。


「伊波。お前本当に盾を持つの?」

「ん? もちろんだ。事前に話し合ったじゃないか」

「いや、そうなんだけどさ……」


 なぜ非力な伊波が積極的に盾を持とうとするのか。そして、俺も川辺も心配しつつも止められないのか。それはこの世界のステータス――その内のジョブに関係がある。


 この世界のステータスはレベル、ジョブ、スキルの三つで成り立っている。パーティーで魔物を一匹でも倒せば、その瞬間それらのステータスを取得できるそうだ。


 そしてこの際に得られるジョブはランダムであり、自分で決めることはできない。だが一つ、仮説であるが信憑性が高い話がある。ステータスの取得、成長は、それまでの行動によって変わるのではないか? というものだ。


 実際、後々取得するスキルはレベルとジョブが同じでも、それぞれの経験で変わっているという検証結果が自衛隊と有志の探索者によって判明されている。自衛隊が主導で調べた結果なのだから、疑う余地もないだろう。


 ならば最初のジョブ取得も、装備と行動である程度寄せられるのではないか? そういう意見があり、実際に実行したところ、確実ではないが希望通りのジョブに就けた人が増えたそうだ。


 だからこそ、望むジョブがあるなら最初の装備選びが重要になっていくのだが……。


「いつ理想の女性に会ってもいいように、今から鍛えておかないといけないからね。だから僕は<戦士>になる。慣れ親しんだこの細すぎる体とはおさらばさ」


「いや、その姿勢は真面目に評価するけどさ」

「やっぱ無茶じゃねぇかなぁ」


 本当に心配しかねぇ。こいつに前衛が務まるイメージがまるでない。


 ちなみに、それぞれの希望ジョブを言うと。


 今言ったように、体を鍛えたいからと伊波が<戦士>。


 バランスを考えてもう一人くらい前衛が欲しいよなとなったので、高校時代にラグビー部だった経験を買われて、俺も<戦士>。オタク趣味なだけで、身体を動かすのが嫌いなわけじゃないしな。もはや鍛えた身体は名残しか残っていないが……。


 そしておデブの川辺が<魔術師>だ。いやいや、お前は体形が明らかにお相撲さんだろ。少なくとも前衛だろ、とツッコミが飛んできそうだが。


「きびきび動くとか俺には無理。<魔術師>系一択だわ」


 という、言われてみればそりゃそうだという、シビアな目線でジョブを選んでいた。

 

「大丈夫かな。不安しかないんだけど」

「本人のやる気が一番だろ。無理だったらその時考えればいい」


 そうするしかないか。モチベーションさえあれば、人は成長する。そしてその点で言えば伊波はある意味、俺達より遥かに高い志を持っている。動機は誰より不純だが。


 川辺は盾を持たず、迷わずに木製の杖を手に取った。警棒代わりに使えそうな短めの物だ。


 俺は片手で持てるサイズのメイスで、一番軽くて長めの物を。男として剣とかに憧れるが、技術が要るからな。殴ればいいだけということで、これまた初心者お勧めらしい。


 そしてさらに、全身を隠せるタイプの長方形の透明な防護盾。に、しようと思ったのだが、


「えっ。意外に重いんだけど?」

「どれ? ……ああ~確かに重い。片手で持てなくはないけど、持ち歩くのは辛い」


 そう、そんな感じ。というか、俺よりも軽そうに持っている川辺が凄い。やっぱりお前、前衛になるべきでは?


「これじゃなくて、そっちの小さいタイプにすれば?」

「ああ。確かにこっちなら持てるな」


 全身は無理だが、上半身は守れる大きさだ。これも持ち歩くのはしんどそうだが、さっきの奴よりはマシだ。盾無しで行くのは論外だし、これで行くか。


「よし。伊波。俺らは決まったぞ。そっちは――」


 伊波を見ると、俺と同じサイズの盾を持とうとしていた。

 そして、フッと照れくさそうに言う。


「すまない。僕に盾はまだ早かったようだ」

「まじかお前」


 嘘だろ? 大の男が盾一つ持てないの? お前今までどうやって生きてきたの?


「だが、前衛を諦める訳にもいかないからな。仕方ない。こっちの短槍を両手持ちしよう」

「おっ、おお。まぁそれしかないか。じゃあ川辺、すまんが盾を持ってくれ」


「はぁ?! 俺は<魔術師>志望なんだけど?!」


「いや、さすがに盾持ち一人はきついだろ? アイツが槍ならなおさら守ってやんなきゃだしさ。それにほら、武器まで替えろとは言わないから。その杖なら鈍器代わりにできるし。武器がそれなら<魔術師>の条件を満たしてるじゃん」


「そりゃそうかもしれないけど……ええ~、まじで?」


 ぶつぶつと言いながらも、しょうがねぇなと川辺は俺と同じ盾を取る。盾を持った時点で<戦士>の可能性も満たしているんだが、そこは黙っておこう。


 よし、これで安全は確保できるな。最悪、川辺が<戦士>になる可能性もあるが、むしろそっちの方がいいまであるから問題ない。事故みたいなもんだし、そうなったら仕方ないね。


 装備も決まったところで、職員さんに支部の地下に案内される。地下は上の建物の敷地ほどの広さがあり、その中央に地面から岩山が盛り上がって、そこに洞窟がある。


「ではこちらがダンジョンになります。向こうにいる担当の指示に従ってください」


 そう言う職員に見送られながら、俺達は緊張しながらその洞窟に入った。


 暗闇を数歩進めたところで、一瞬目眩のようなものがしたと思ったら、急に明るくなる。眩しさに目を抑え、恐る恐る手をどかすと、そこには草原が広がっていた。



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