20章 未来への審判

王宮の「美女の間」では、大司教ベアトリスと宰相マルグリットが優雅に会議を進めていた。部屋は豪華なシャンデリアの光で満たされ、壁には壮麗な絵画と金箔を施した装飾が施されていた。絹のカーテンが微かに揺れ、外の穏やかな庭園の景色がのぞいている。


「蜂起の噂など取るに足らないわ。」

ベアトリスは、金の縁取りが施されたティーカップをそっと置きながら話した。彼女の声には揺るぎない自信が満ちていた。

「軍がすぐに鎮圧するでしょう。何しろ、あの愚かな女性たちに戦術というものが理解できるとは思えませんもの。」


宰相マルグリットは軽く笑い、隣のテーブルから一口の赤ワインを口に含んだ。彼女の唇に浮かぶ微笑みには冷たさが滲んでいた。

「そうね。女性同士なんて結局、互いに足を引っ張り合うだけ。団結なんて夢物語よ。」


二人の自信は、これまでの彼女たちの権力基盤から生まれるものだった。ベアトリスは教会の絶対的な影響力を誇り、マルグリットは国家の財政と軍事を掌握している。この強固な体制の中で、彼女たちは誰も自分たちに逆らえないと信じて疑わなかった。


しかし、静けさを破るように、突然扉が激しく開いた。その衝撃音に、二人は同時に顔を上げた。


「何事!?」


そこに現れたのは、怒りに燃える女性たちだった。エリスを先頭に、彼女たちは毅然とした態度で部屋の中へ突入してきた。彼女たちの足音は高価な絨毯の上でもなお響き渡り、豪華な空間に異様な緊張感を生み出した。


「何をしている!」

ベアトリスは立ち上がり、怒りを露わにしたが、その声は女性たちの無言の圧力によってかき消された。


マルグリットは冷静を装おうとしながらも、目の奥には動揺が浮かんでいた。

「どうしてここに……?一体どうやって。」


女性たちは彼女たちに取り合うことなく、無言のまま手際よく縄を取り出し、大司教と宰相の両手を後ろ手に縛り上げた。


「あなたたちが築いたこの制度の犠牲になった女性たちの怒りを、今こそ味わう番よ。」

エリスの声は冷たく鋭かった。それを聞いて、マルグリットは冷ややかな笑みを浮かべたが、その目には小さな恐れが隠しきれなかった。


縛り上げられた二人は、女性たちによって王宮の廊下へと引き出された。高価な装飾が施された絵画や彫刻の横を通るたびに、それらが微かに揺れ、彼女たちの足音が廊下の静けさを切り裂いていった。



に出ると、眩い陽光の下、庭園には無数の女性たちが集まっていた。その目には怒りと決意が宿り、声を上げる者もいれば、拳を握りしめる者もいた。庭園の中央には即席で設けられた台があり、その前に縛られたベアトリスとマルグリットが引き出された。


最初、二人は堂々とした態度を崩さなかった。群衆を見渡しながら、互いに挑発的な笑みを交わしていた。


「さっさと殺せばいい。」

マルグリットが低い声で呟くと、ベアトリスも冷たく頷いた。



しかし、彼女たちの言葉に女性たちは動じることなく、逆にその表情に怒りの色を濃くしていった。


「この国の女性たちを支配し、搾取し続けたその代償を払う時が来たのよ。」

エリスはその場の中央に立ち、女性たちに向けて力強く声を上げた。


「なぜあなたたちを後ろ手に縛ったかわかる?」


エリスの冷静な声が、静寂に包まれた空間に響いた。囚われた尼僧と宰相は互いに目を合わせるが、答えを見つけられず沈黙したままだった。その沈黙は、周囲の女性たちの中に抑えきれない感情を呼び起こした。


怒りの声が、波のように広場を包み込む。


「私たちはあの広場で、あなたたちに屈辱を与えられた!」


「彼女たちに自分たちの行いを反省させるべきよ!」


周囲の女性たちが口々に言い募る中、エリスはゆっくりと一歩前に進み出た。その瞳は冷静さを保ちながらも、鋭い光を放っていた。彼女が口を開くと、周囲は再び静まり返った。


「あなたたちが与えた屈辱、それをほんの一瞬でも感じてもらいたいの。だから後ろ手に縛ったのよ。私たちが受けた痛みと無力感、その重さを知ってもらうために。」


エリスの言葉には一切の怒りや苛立ちが含まれていなかった。むしろその声は冷たく澄んでおり、二人に与えられた罰の理由を静かに告げるものだった。しかし、その一言一言は二人の心に深く突き刺さった。


「どうかお許しを!」


二人は後ろ手に縛られたまま、必死に頭を下げた。その動きにはこれまで保ってきた高慢な態度は微塵もなく、完全に崩れ落ちた様子があらわだった。


「お願いです、ブラジャーだけはそのままにしてください! 胸を露出させられる屈辱だけは耐えられません!」


「なぜあなたたちを後ろ手に縛ったかわかる?」


エリスの冷静な声が、静寂に包まれた空間に響いた。囚われた尼僧と宰相は互いに目を合わせるが、答えを見つけられず沈黙したままだった。その沈黙は、周囲の女性たちの中に抑えきれない感情を呼び起こした。


怒りの声が、波のように広場を包み込む。


「私たちはあの広場で、あなたたちに屈辱を与えられた!」


「彼女たちに自分たちの行いを反省させるべきよ!」


周囲の女性たちが口々に言い募る中、エリスはゆっくりと一歩前に進み出た。その瞳は冷静さを保ちながらも、鋭い光を放っていた。彼女が口を開くと、周囲は再び静まり返った。


「あなたたちが与えた屈辱、それをほんの一瞬でも感じてもらいたいの。だから後ろ手に縛ったのよ。私たちが受けた痛みと無力感、その重さを知ってもらうために。」


エリスの言葉には一切の怒りや苛立ちが含まれていなかった。むしろその声は冷たく澄んでおり、二人に与えられた罰の理由を静かに告げるものだった。しかし、その一言一言は二人の心に深く突き刺さった。


「どうかお許しを!」


二人は後ろ手に縛られたまま、必死に頭を下げた。その動きにはこれまで保ってきた高慢な態度は微塵もなく、完全に崩れ落ちた様子があらわだった。


「お願いです、ブラジャーだけはそのままにしてください! 胸を露出させられる屈辱だけは耐えられません!」


彼らの震える声が響く中、エリスは動じることなく答えた。その目は彼らの内面を見透かすようにまっすぐだった。


「復讐が目的ではないわ。」


その一言に、広場の空気が一変した。エリスは続けた。


「私たちの目的は、未来を取り戻すことよ。あなたたちに与えられた屈辱と恐怖を私たちが同じ形で返すことではなく、それを超えたところに私たちの目指す未来があるの。だから、胸を露出させるだなんて真似はしない。」


その言葉は周囲の女性たちにも強い影響を与えた。ざわめきは徐々に収まり、彼女たちの表情には新たな覚悟が浮かび上がった。囚われた尼僧と宰相は、エリスの毅然とした態度に圧倒され、地面に額を押し付けるようにして謝罪を続けた。


「私たちは……間違っておりました……どうか……」


エリスはしばらく二人を見つめ、静かにため息をついた。そして、柔らかい声で言った。


「あなたたちがこれまで見過ごしてきたもの、そして押し付けてきたもの。その重みを知りなさい。私たちの願いは、その気づきを持ってこれからの生き方を変えること。ただそれだけよ。」


彼女の言葉に、二人は涙を流しながら頷いた。彼女たちが放った感情の波は、静けさの中で別の形の力へと変わっていった。それは、これからの未来への一歩を照らす光となるような予感だった。




涙ながらに懇願する二人の声はかすれ、震えていた。それを見た女性たちは、これまで受けた苦しみと屈辱の一部が報われたような感覚を抱きながらも、その光景に複雑な思いを抱いていた。


エリスはその光景をじっと見つめながら、深い息を吐き出した。過去の苦しみと未来への希望が胸の中で交錯していた。周囲の女性たちもまた、感情が高ぶり、涙を流しながら勝利の瞬間を共有していた。


「これが私たちの力。私たち自身の手で掴んだ未来なのよ。そして、あなたたちを許します。」


その言葉には、過去を乗り越え、新たな未来を築く強い決意が込められていた。


エリスが静かにそう呟いたその時、女性たちは自然と手を取り合い、感情を爆発させるように歓声を上げた。その声は空高く響き渡り、庭の木々を揺らすほど力強かった。


誰かが「これが自由だ!」と叫ぶと、それに続いて「私たちの尊厳だ!」と次々に声が重なっていった。彼女たちの勝利の歌声は、未来への希望を象徴するように空に吸い込まれていった。


「これが私たちの勝利だ!」


女性たちの声が空高く響き、彼女たちの瞳には涙が浮かんでいた。それは苦しみを乗り越えた達成感と、新しい時代への期待が入り混じったものだった。誰かが手を取り合い、抱き合いながら涙を流すと、それに続いて周囲の女性たちも感情を爆発させるように互いを讃え合った。


「私たちは勝った!これが私たちの未来だ!そして、ブラジャーは再び私たちの手に戻った!」


木々に囲まれた庭園には、彼女たちの声が響き渡り、周囲の風景もその熱意を祝福しているかのように穏やかな光を浴びていた。その場を包む空気には、過去の重みと未来への期待が織り交ざり、確かな手応えを感じさせるものだった。


その後、エリスは静かに視線を上げ、燃え盛る太陽を見つめた。「この瞬間を忘れないで。」その一言に、女性たち全員が静かにうなずき、共に歩む決意を新たにした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る