第5話 初めての実戦
夜の静寂を切り裂くように鳴り響いた警報。
それはアークレイン機械戦術学院で過ごす生徒たちにとって初めての「実戦」を告げる音だった。
アレンたちCクラスは学生寮で翌日の授業に備えていた。
しかし、突如響いた警報と共にライオネル教官の声が放送で寮内を駆け巡る。
「全生徒、訓練場南側に集合せよ!警戒態勢レベル3を発動する!」
慌ててアンブレラを手に学校へ向かうアレンたち。
暗闇の中、いつも陽気なユアンですら緊張を隠せない様子だ。
「これ、普通の訓練じゃないよね?」
と不安げに呟くエリナに、ジェイスが静かに答える。
「警戒態勢レベル3はのヴォイドLv1発生だ。全員、慎重に行動しろ。」
訓練場に到着すると、そこにはすでにヴォイドと戦っている教官たちの姿と、
雨上がりの地面に無数の水たまりが広がっていた。
「気を抜くな。この水たまりがヴォイドの発生源だ。」
イザベラ教官が冷静に説明する。
突如、水たまりが不気味に波打ち、ヴォイドLv1が次々と出現する。
その姿は、アレンたちが模擬訓練で見た映像よりもはるかに恐ろしく、鋭い触手が不規則に動き回る。
「これが…実戦…」
アレンは息を呑む。死ぬかもしれない緊張感に足が震えている。
「Cクラス、前線に立て!」
ライオネル教官の命令で、アレンたちは恐怖を抑えながら前に出る。
レナが勇敢にアンブレラを構え、電撃を放ってヴォイドを撃破する。
「ほら、アレン!ぼさっとしてる場合じゃない!」
その声に奮起したアレンも続き、アンブレラの電撃でヴォイドのコアを破壊する。
一方、セドリックの精密な射撃が遠距離からのヴォイドを次々と倒す姿に、
ユアンが「さすが影のエースだな!」と声を上げる。
戦いが一段落したかに見えたその時、ひときわ大きなヴォイドが森の奥から現れる。
血を吸収し、赤みを帯びた人型に進化したヴォイドLv2だ。
「ヴォイドLv2出現、学生は退避しろ!」
イザベラ教官の緊迫した声が響く。
ヴォイドLv2は異常なスピードで触手を伸ばし、生徒たちを翻弄する。
エリナが傘を開き防御するも、近距離型の傘は壊され圧倒的な力に追い詰められる。
その瞬間、アレンが咄嗟に彼女を守るために立ちはだかる。
「やらせるか!」
必死の一撃でヴォイドLv2を怯ませるが、電撃がコアを捉えていない。
ヴォイドLv2の標的がアレンになり、アレンが死を覚悟した瞬間。
「もう十分だ、下がれ!」
ライオネル教官が前に出ると、圧倒的な電撃を放ち、一瞬でヴォイドLv2を消し去った。
その姿に、生徒たちは息を呑む。実戦の厳しさと教官たちの実力を目の当たりにし、
アレンたちは初めて戦いの重さを実感する。
訓練場の片付けを終え、寮に戻るCクラス。
ユアンが無理に場を盛り上げようと笑うが、どの顔にも疲労と恐怖が残っている。
「これが俺たちが向き合う現実か…」
アレンはアンブレラを見つめ、脳裏に残る恐怖を思い出していた。
夜空には、次の雨が降り出しそうな雲が静かに広がっていた――。
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