第4話 ヴォイドの謎

技術教官イザベラ・カーンが教室に入ると、生徒たちは一斉に背筋を伸ばした。

彼女の冷静な雰囲気が緊張感を漂わせている。


「今日は、ヴォイドの基本的な知識と、それに対抗するアンブレラの仕組みについて話します。」


イザベラがスクリーンに映し出したのは、不気味にうごめく水の塊――ヴォイドLv1だった。


「これがヴォイドLv1。水たまりから発生し、鋭い触手を持ち、人間を襲う存在です。ヴォイドは、水の精霊たちが人間を殺すために生み出している兵器です。」


「水の精霊がヴォイドを生み出している?」

ユアンが驚いた声を上げる。


「その通り。」

イザベラは静かに頷く。


「水の精霊たちは昔、人間が自然を破壊し、水を汚したことに激しい憎悪を抱いています。その報復として、人間を滅ぼすためにヴォイドを作り出したのです。」


「それじゃあ、水の精霊は完全に敵なんですね…」

レナが眉をひそめる。


「ヴォイドを倒しても、水の精霊がまた新しいのを作るってことですか?」


「そうです。そのため、ヴォイド討伐は終わりのない戦いとも言えるでしょう。」


「さらに、ヴォイドは血を吸収することで進化します。」


イザベラが映像を切り替えると、赤く硬化したヴォイドLv2が現れた。

触手を振り回し、周囲を破壊する映像に生徒たちは息を呑む。


「これがヴォイドLv2。現在、確認されている最高進化段階です。攻撃力と防御力が大幅に上がります。」


「進化するモンスターって、反則じゃない?」

マーラが冗談交じりに言うが、その顔には緊張の色が見える。


「進化を止める方法はないのか?」

ジェイスが冷静に質問する。


「それは現在も研究中です。」

イザベラが答える。


「ただ、進化を防ぐには血を吸収させないことが最善の手段です。」



「次に、アンブレラの種類について説明します。」

イザベラが3種類のアンブレラの図を表示する。


【近距離型】

重量5kg。ヴォイドLv1までの攻撃を防げる。射程3m、最大電撃出力10発まで。


【遠距離型】

重量1kg。防御性能は普通の傘程度、射程50m。最大電撃出力5発まで。


【防御型】

重量10kg。ヴォイドLv2までの攻撃を防げる。射程1m、最大電撃出力20発まで。



「これらの特性を理解し、自分に合ったタイプを選ぶことが重要です。」


「遠距離型一択だな。遠くから射撃が一番安全!」

ユアンが意気揚々と話すと、エリナがあきれた声で遮る。


「ヴォイドに襲われても誰もあんた守らないからね。」


「それじゃ、エリナは防御型にするのか?」

マーラが挑発的に笑う。


「あんな重いの、絶対ムリでしょ。」


「いや、ゴリr…エリナならいける。」

ユアンがからかうと、エリナはユアンの首を絞めながら言った。


「ゴリラのパワー見せてあげようか?」


「ごめんなさい、ギブギブギブ…。」

二人のやり取りにクラスが笑いに包まれた。


「俺は近距離型だな。攻めと守りのバランスが良いし、動きやすそうだ。」

アレンが静かに言うと、レナが微笑む。


「私も近距離型。少しでも多くの人を救いたいから。」


「そうだな、近距離型なら俺もいけそうだ。」

セドリックがボソッと呟くと、ユアンが笑いながら言った。


「お前が攻めるとこなんて見たことないけどな!」


「それは見てないだけだ。」

セドリックは淡々と返した。


「最後に、重要な情報をお伝えします。」

イザベラがスクリーンを切り替えると、精霊とヴォイドの関係を示す資料が映し出される。


「ヴォイドは水の精霊によって作り出された存在です。これを止めるには、水の精霊たちとの戦いを避けられません。」


「水の精霊が敵…でも、それじゃまた戦争になるじゃないですか。」

ナイラが不安そうに声を上げる。


「これまで幾度も共生を試みましたが、水の精霊による殺戮は止まらないのが現実です。」

イザベラの言葉に、教室は静まり返った。



講義を終えた後、アレンは廊下でレナに話しかけた。


「レナは一生戦い続ける覚悟があるのか?」


「やるしかないでしょ。」

レナが力強く微笑む。


「私たちはそのためにここに来たはずよ。」

レナの決意が垣間見えた気がした。


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