第2話 初日の訓練
翌朝、アレンたちCクラスの生徒は学院の訓練場に集められた。広大なフィールドには様々な機械装置が設置されており、その一つ一つが学院の最先端技術を示していた。
「さあ、新入生達よ。これが今日からお前たちの相棒となる武器だ。」
実践教官エヴァン・ロックウッドが満足げな笑みを浮かべながら、傘の形をした機械式の武器を一人ひとりに手渡していく。その名は「アンブレラ」。アレンも手にすると、思った以上にずっしりとした重みを感じた。
「これが……アンブレラか。」
「見た目はただの傘だけど、中身はすごいんだよ。」
隣に立っていたレナが興奮気味に話しかけてきた。
「傘の骨組み部分には電撃を発生させる装置が組み込まれていて、コアを攻撃することでヴォイドを倒せるんだ。しかも、攻撃方法は電撃だけじゃない。防御用のシールドも展開できるんだよ。」
「シールドまで?」
アレンが驚いた表情を見せると、レナは得意げに頷いた。
「そう。ただし、使いこなすにはコツがいるけどね。」
「レナ・アルヴェス!詳しいようだが私より先に説明されると困るね。」
「す、すいません…。」
レナのしょんぼりした姿を他所に
教官エヴァンが訓練生たちの前に立ち、アンブレラの基本操作を説明し始めた。
「まずは構え方だ。アンブレラは傘の形をしているが、これは単なる見た目じゃない。突きや払いといった近接戦闘にも使える。次に、ハンドル部分のスイッチだが、
これで電撃の出力を調整する。高出力にすれば一撃でヴォイドを仕留められるが、消耗が激しい。充電が切れたらただの鉄くずになると思え。」
教官の説明に生徒たちは真剣な表情で耳を傾けていた。しかし、その中で一際大きな声が響いた。
「ねえ、こんなデカい傘、どうやって素早く振り回すのさ?」
陽気なユアン・グレイが軽口を叩き、クラスメイトたちが笑い声を漏らす。
「使えなきゃ戦えない。それだけだ。」
エヴァンは冷たい視線をユアンに向け、軽く肩をすくめた。
「おい、ユアン。馬鹿なこと言ってないで練習しろってことだ。」
カイル・ヘイゼルが冷静にたしなめると、ユアンは「分かってるって!」と笑いながらアンブレラを手に取った。
訓練が始まると、アレンは操作の難しさに苦戦していた。アンブレラを開閉するだけでも重く、電撃を発生させるスイッチのタイミングを掴むのに手間取った。
「アレン、大丈夫?」
レナが心配そうに声をかけてくる。
「……。こんなのすぐには使いこなせそうにないな。」
「最初はみんなそんなもんだよ。でも、練習すればちゃんとできるようになるでしょ。」
レナは励ますように笑いかけた。その笑顔にアレンも少し元気を取り戻した。
(やっぱり天使だ)そう思った。
一方で、隣で訓練中のAクラスでは、ダリル・クレインがさっそくアンブレラを巧みに操り、木製のターゲットに正確な電撃を叩き込んでいた。
「俺を見て学べ!」
彼は得意げに言いながら周囲の生徒たちにアピールしていた。
代々軍事家系のクレイン家なだけありすでにアンブレラを扱えている。
「さすがエリート様だな。」
カイルが皮肉っぽく呟くと、ダリルはCクラスに冷たい視線を返した。
「凡人にはアンブレラのメンテナンス役がお似合いだな。」
その言葉にカイルは眉をひそめたが、何も言い返さなかった。
昼休憩になり、アレンとレナは食堂の隅で昼食を取っていた。
「ダリルって、本当に嫌なやつ…というかヤバイ奴だな。」
アレンが溜息混じりに言うと、レナは小さく笑った。
「まあね。でも、あの人もああいう態度の裏に何かあるんだと思うよ。きっと。」
「そうなのかな……。」
「それより、アンブレラ使ってみてどう?」
レナが話題を変えるように尋ねた。
「正直、まだ全然使える気がしない。」
「ふふ、それならレナ教官が特訓してやろう。期待しているがよい。」
レナはすくっと立ち上がり教官のように腕組みをした。
「はっ!レナ教官よろしくお願いします。」
レナの自信満々な表情に、アレンも思わず笑みをこぼした。
午後の訓練では、実践教官エヴァンがヴォイドを模したターゲットを用意し、生徒たちに攻撃を命じた。初日にもかかわらず訓練の厳しさに、アレンは付いていくのに必死だった。
こうして、アレンたちの学院生活は本格的に動き始めた。初日の訓練を終えた彼らの心には、新たな希望とともに、不安や決意が入り混じっていた。
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