UMBRELLA
もじょきんたん
第1話 新たなる門出
小雨が降りしきる中、アレン・リードは巨大なアークレイン機械戦術学院の門前に立っていた。
その堂々とした門構えは、これから待ち受ける厳しい訓練の日々を象徴しているかのようだった。
学院の校舎は重厚な石造りで、鉄と機械が融合した近代的な設備が目に入る。
アレンは少し緊張した面持ちで、背負った荷物をぎゅっと握りしめた。
感傷に浸ってみたが、寝坊したため遅刻ギリギリだ。すかさずダッシュした。
学院内に足を踏み入れると、すでに多くの新入生たちが集まっていた。誰もが期待と不安を抱えた顔つきで、
それぞれの夢や目標を胸に秘めているようだった。
「お前、新入生か?」
声をかけてきたのは、短髪で精悍な顔立ちの少年だった。彼は堂々とした態度でアレンを見下ろしている。
「ええ、そうだけど……君は?」
「ダリル・クレインだ。お前、田舎から来たんだろう?その装いと雰囲気で分かる。」
ダリルは冷たい笑みを浮かべる。
(初対面で挑発的な態度とはヤバイ奴だ。)
アレンはむっとするが、目を付けられたくないので言い返すのはやめた。
「俺はアレン・リードだ。これからよろしくな。」
「フン、まあせいぜい足を引っ張らないことだな。」
(やっぱりヤバイ奴だ・・・)
そのやりとりを横から見ていた明るい声が割って入る。
「おやおや、そんな固い話ばっかりしてたら学院生活がつまらなくなりますぞ!」
アレンの隣に現れたのは、短い茶髪を揺らしながら笑顔を浮かべた少女、レナ・アルヴェスだった。
彼女はダリルに軽くウインクをしてみせる。
「あんまりいびると友達いなくなるわよ、ダリル。」
「……別にいびってるわけじゃない。」
ダリルは一瞬たじろいだが、すぐに視線をそらした。レナは満足そうに笑い、アレンに手を差し出す。
「アレン・リード、ね?私はレナ・アルヴェス。よろしく!」
アレンは戸惑いながらもその手を握った。レナの明るい笑顔は、彼の緊張を少しだけ和らげた。
(マジ天使、今日から推せる)
新入生全員が集合したところで、戦術教官のライオネル・ストークスが姿を現した。
中年の厳格そうな男性で、その鋭い目つきは生徒たちを一瞬で黙らせる威圧感を持っていた。
「静粛に!」
彼の低く響く声が講堂内に響き渡る。全員がその声に従い、一切の雑音が消えた。
「ここに集まったお前たち全員が、これからの世界を守る戦士となる覚悟を持っていると信じている。
しかし、覚悟だけでは足りない。ここではお前たちの弱さを叩き潰し、強さを引き出す。
生き残りたければ、死ぬ気で学べ。」
その言葉に、生徒たちの顔が一気に引き締まる。アレンもまた、自分の拳をぎゅっと握りしめた。
広大な講堂で入学式が行われた後、生徒たちはそれぞれのクラスに振り分けられた。
アレンはCクラスに配属され、寮の部屋で荷物を整理したのち、教室へ向かった。
そこにはすでに数名の生徒が座っており、アレンも空いている席を見つけて腰を下ろした。
ほどなくして、扉が静かに開き、戦術教官ライオネル・ストークスが教室に入ってきた。
その鋭い眼光が教室を見渡すと、生徒たちは自然と背筋を伸ばした。
「全員、静かに。」
ライオネルの低く響く声が教室に静寂をもたらした。
「お前たちは、アークレイン機械戦術学院で戦闘の基礎を叩き込まれる。
この学院の目的は、ただ一つ人類の脅威であるヴォイドを討伐し、
人類の存続を守る戦士を育成することだ。」
ライオネルの言葉に、生徒たちは一斉に緊張した表情を浮かべた。
ヴォイド——水たまりから現れる水性モンスター。それは人類の生存を脅かす存在であり、
アレンがこの学院に入学した理由でもあった。
ライオネルは教壇に手を置きながら言葉を続けた。
「ヴォイドとの戦闘は油断すれば死ぬ。 ここで学ぶのは技術や知識だけではない。生き残るための本能だ。
この場で全力を出せない者は、この学院にいる資格はない。」
「Cクラスは底辺、残り物のカスだ!死ぬ気で付いてこい!」
教室内は完全に静まり返り、ライオネルの厳しい言葉が生徒たちの胸に深く刻まれた。
ライオネルが話を終えた後、もう一人の教官が教室に入ってきた。
技術教官のイザベラ・カーンだった。美人なお姉さん教官の登場に男子が沸き立つ。
彼女は冷静な口調で自己紹介を始めた。
「私はイザベラ・カーン。機械式傘、通称『アンブレラ』の設計に携わった者として、技術指導を担当する。
これから皆さんにはこの武器を徹底的に知ってもらう。『アンブレラ』は雨を避ける道具ではなく、
あなたたちの命を守る盾であり、ヴォイドを滅ぼす刃でもある。」
「質問がある人は?」
イザベラがそう尋ねると、陽気なユアン・グレイが手を挙げた。
「先生、アンブレラって傘だけど、雨に濡れたら壊れないんですか?
あと、先生のスリーサイズを教えてください。」
その場の空気が一瞬凍りついたが、イザベラはため息混じりに答えた。
「心配しなくても壊れないわ。むしろ雨の中で戦うことを想定して設計されている。
あと、他人の体に興味を持つ前に自分のひ弱な体をどうにかしなさい。色々小さそうね。」
クラスメイトたちの小さな笑い声が教室に広がる中、ユアンは苦笑いを浮かべた。
最後に実践教官のエヴァン・ロックウッドが前に立った。彼は明るい笑顔で生徒たちに向き合った。
「俺はエヴァン・ロックウッド。実践訓練を担当する教官だ。戦闘に関しては誰よりも厳しく指導するつもりだが、
その分楽しむ心も忘れないでくれよ。ヴォイドは確かに恐ろしい敵だが、恐怖を乗り越えることこそが成長の鍵だ。」
エヴァンの言葉に、生徒たちは少しだけ緊張が和らいだようだった。
その後、生徒たちはそれぞれ自己紹介を行い、クラス内の顔ぶれが明らかになった。
アレンは明るいレナ・アルヴェスや、冷静なカイル・ヘイゼル、陽気なユアン・グレイらと会話を交わし、
少しずつ新しい環境に馴染んでいった。
こうして、アークレイン機械戦術学院での新たな日々が本格的に動き始めた。
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