Interude1-2 『Memories of a Forgotten Place』

あたたかい天気。あたたかい家。あたたかい温もり。

オレには大好きなものがたくさんあった。


母さん、父さん、ニコラス、おうち、おうちで飼っているザリガニ、亀、母さんの料理、父さんのただいまって声。……そして弟。


「……あなたの名前はね、最初からこれだって決めてあったの」


もう何度も話してくれた、オレの名前の由来も大好きだった。


「母さんの大好きなブランド品を作った人みたいにね、たくさんの人の憧れになって、道標になって、いっぱいキラキラを振りまいてほしいの」


オレはオレの名前が大好きだった。


「わざわざちゃんとイタリア留学に行って、イタリア人と結婚したのはあなたの名前を完璧にするためなのよ」


母さんのことも、大好きだった。


「……好……よ……レン……」


もう母さんの声も、言葉も、今更思い出せるものではない。

けどオレはそれでも記憶の断片を拾った。


「……すごいじゃない!かけっこで一番だなんて」

「えらいわね、もう足し算ができるの?」

「わぁありがとうっ、お母さんのためにお誕生日会を用意してくれたのね!」


本当に愛されていた。……愛されていたのに。

母さんの顔を、もうよく思い出せない。思い出せるのは、血塗れの顔だけだ。


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