Interude1-2 『Memories of a Forgotten Place』
あたたかい天気。あたたかい家。あたたかい温もり。
オレには大好きなものがたくさんあった。
母さん、父さん、ニコラス、おうち、おうちで飼っているザリガニ、亀、母さんの料理、父さんのただいまって声。……そして弟。
「……あなたの名前はね、最初からこれだって決めてあったの」
もう何度も話してくれた、オレの名前の由来も大好きだった。
「母さんの大好きなブランド品を作った人みたいにね、たくさんの人の憧れになって、道標になって、いっぱいキラキラを振りまいてほしいの」
オレはオレの名前が大好きだった。
「わざわざちゃんとイタリア留学に行って、イタリア人と結婚したのはあなたの名前を完璧にするためなのよ」
母さんのことも、大好きだった。
「……好……よ……レン……」
もう母さんの声も、言葉も、今更思い出せるものではない。
けどオレはそれでも記憶の断片を拾った。
「……すごいじゃない!かけっこで一番だなんて」
「えらいわね、もう足し算ができるの?」
「わぁありがとうっ、お母さんのためにお誕生日会を用意してくれたのね!」
本当に愛されていた。……愛されていたのに。
母さんの顔を、もうよく思い出せない。思い出せるのは、血塗れの顔だけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます