Interude1-0『Three Bloody Narratives』

(12/24)

オレら3人は、冬の気温が氷点下にも達する寒いところで育ってきた。

アメリカのウィスコンシン州、ミルウォーキーの端っこ。え、どこだよって?来てみれば雰囲気はわかるさ。


とにかくオレらはそんなところで育った。3人とも生まれは全然違うけど、オレらは確かに兄弟だった。

養護施設育ちなんていったら、不幸な子だって思われそうだけど。でも3人が一緒にいれば、何も怖くなかった。きっと、世界で一番幸せなんだ!


ちっこい黒髪、ヴァリー。甘えんぼさんでいつもオレのあとをくっついてる末っ子。

茶色の美人、ジュディ。オレらと肌の色は違うけど、心はひとつだ。

で、オレが金色のヒーロー、レン。下2人を支えている兄貴分だ。


ヴァリーは一人だけ違う世界にいるみたいな、不思議な宇宙人。うそうそ、違うって。そんな睨まないでくれ。テメェはちゃんとオレらと同じ人間だよ。

ジュディはとにかく美人で、お人形さんみたいな子。ジュディが女の子だったら、ジュディのことはオレがお嫁さんにしてた。


2人はオレにとって大切な宝物。ピカピカの宝物だ。

だから絶対、オレが幸せにするんだ。


***

(1/2)

オレの将来の夢はお巡りさん。みんなの街のヒーローだ。

小さいガキも、腰のまがったおばあちゃんも、オレが助けてあげるんだ。

ドラマの中の、ニコラスみたいなかっこいいオジサンになるんだ。

そしたらきっと、どこにもいないヴァリーのお父さんとお母さんも見つけてあげられるから。


***

(震えた字、水に濡れたのかグシャグシャになった紙、血痕、破れたページより解読可能な文章を抜粋)

悪魔が来た。悪魔が悪魔が悪魔が悪魔が悪魔が悪魔が悪魔が悪魔が


エクソシストを呼ばないと、(解読不能)に取り憑いた悪魔を祓ってもらうんだ。

痛い痛い痛い痛い痛い(以下同文)


なんで?何が悪かった?それとも最初から罠だった?

話しかけなきゃよかった?どうすればよかった?オレは間違ってたのか?


ジュディだけは、守らなきゃ。オレが守らなきゃ。

(解読不能)


***

(破り捨てられたグシャグシャのページ)


母さん、大好きな母さん(解読不能)

何で死んじゃったんだ?悪魔に魂を取られちゃったのか?

助けて、誰か助けて


***

(ゴミ箱に捨てられたページ)


お巡りさんになりたいってがんばったのに、アイツがオレを外に出してくれない。

ヒーローになりたいって思ったのに、人生で初めて救ったヤツが悪魔だったから、オレは悪魔に気に入られてしまったんだ。

殺してやりたい(字の上に二重線が引かれている)


***


少しずつ、少しずつ、彼の生きた証を集めて集めて。

それでも満足できる量には程遠い。


それでも集めて、少しでも温もりを感じられたら。

兄さんは『怒られるくらいなら構われない方がマシ』なんて言っていたが、そんなことは愛されていたから言えることだ。


愛されるためなら手段を選ばない。

どんな愛し方でもどんな愛され方でもいい。とにかく私に強い感情を向けてほしかった。構ってほしかった。私が生きているということを、私がそこに確かに存在していることを、私が幽霊ではなく他人に認知されていることを、知覚されていることを、どんな手段を使ってでも知りたかった。


会いに行こう。兄さんに会いに行こう。

私が間違っていたことは知っている。だから手は出さない。会いに行くだけだ。


今の私ならきっと、会うだけで大丈夫。安心できる。

私は愛されている。愛されているんだ。


兄さんはどこにもいかない。私の近くにいてくれる。


……大丈夫。

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