第4話 TRPGの中盤シナリオ
中盤:廃都の深部 ― “迷いの区画”と機械仕掛け
1. 迷いの区画(ラビリンス)の設定
(A) 地形・構造
・ラビリンスの位置: 廃都の中心部に近づくにつれ、通路が狭く錯綜し始め、壁面には鏡や反射板、光学装置が埋め込まれた区画が続く。
・壁・床の変動: 一部フロアは“可動式”になっており、スイッチやレバー操作により壁がスライドして通路を塞いだり、新たな出口が現れたりする。
・影の演出: 光源が一定でないため、廃都内部に置かれた微弱な光や差し込む日差しの角度が頻繁に変わる。
・壁の鏡・反射板が複雑に組み合わさり、同じ道を歩いているはずが影の位置が変わってPCを惑わす。
・〈感覚系技能〉や〈知覚〉判定に失敗すると「同じ場所をぐるぐる回っている」と錯覚する仕掛け。
(B) “影の呪術”の深まり
・序盤(第3部)で現れた「影が沈む感覚」は、ここではさらに強力化。
・ある箇所では、地面に映るPCの影が逆向きに動く、あるいは 消えてしまうなど、ホラーな演出が可能。
・こうした不可解な現象は 単なる視覚トリック+魔術干渉の合わせ技であることを示唆し、プレイヤーに【光と影を両方意識しないと迷宮を突破できない】というメッセージを与える。
2. イベント例:廃都の制御装置
(A) 制御室を発見
・場所: ラビリンスの中ほどにある小さな円形部屋。
・内部描写:
・古い操作盤が中央に据えられ、周囲の壁に歯車やレバーが剥き出しになっている。
・いくつかのメーターや水晶板が、わずかな光を受けて鈍く輝く。
・PCが足を踏み入れると、不穏な機械音が微かに聞こえ、床下で仕掛けが可動している気配を察する。
(B) 操作盤
・レバーやスイッチ: 〈工学〉または〈魔術知識〉判定(難易度中~高)に成功すれば、それぞれが「ラビリンスの壁をスライドさせる」「床の高さを変える」「鏡の角度を調整する」などの機能をもつと分かる。
・イベントの成否:
・成功: プレイヤーが知恵を絞り、レバーの操作順や可動範囲を把握できれば、複数の通路を繋ぎ、新エリアへ行ける道が開通。
・失敗: 操作を誤ると、壁や床が意図せず動き、パーティが分断される、あるいは落とし穴が作動してダメージを受ける可能性。
・追い込まれる演出: GMが好みで、制御室に敵(ゴーレム/亡霊)を出現させ、戦闘しながらの操作を要求しても盛り上がる。
(C) コントロールパネルの爪文字
・爪で刻まれた走り書き:
・「光が当たらねば出口は閉ざされる」
・「2つの視点を合わせねば真の通路は開かない」
・「振り返れ、さもなくば再び迷いへ堕ちる」
・解釈:
1. パズルのヒント: “光源をどこへ当てるか?” “鏡の角度をどう合わせるか?”
2. 伏線
・「背後」を確認しないと先に進めない
・「2つの異なる角度」から物事を見る
(D) 非常解放プロトコル(オプション)
・古代都市の工学装置には、“炎災”や“大爆発”を感知すると、特定ゲートを自動開放し、内部住民(当時の人々)が避難できるよう計画されたシステムが存在。
・ラビリンス制御室には 〈非常用アラート〉 というレバーかパネルが隠されており、これを意図的に起動(もしくは何らかの罠による誤作動)させると「非常ゲート」が開く。
・ただし、非常ゲートの先にはモンスターが巣くう下層部や兵器庫跡地があり、大量のクリーチャーが侵入する危険性がある。
・GMは、PCが誤ってアラートを発動すれば「モンスター来襲」イベントを導入可能だし、上手く利用すれば逆手にとって脱出路に使える可能性もある。
3. 中盤の伏線
(A) “正面からは意味がない”という謎解き
・迷路内のある扉が、正面から見ると鍵穴が見当たらないのに、横や背面から見下ろすと小さな穴が確認できる――といった仕掛けを入れられる。
・プレイヤーは「なぜ正面に鍵穴がないのに、背面や斜め上から覗くと別の凹凸があるのか?」と悩む。
(B) 多面的仕掛け(光学装置 + 鏡 + 影)
・プレイヤーが「鍵=ロック」以外にも光の反射、鏡の角度、影の投影を考慮しないと進めない。
・望月氏がここで強調したのは、複数の要素を重ねることで“普通の鍵トリックでは説明できない迷路”を作り出すというアイデア。
(C) “背後や別角度を必ず確認”という合言葉
・コントロールパネルの爪文字だけでなく、ラビリンス各所に貼られた古びたメモなどにも「後ろを見よ」「陰を視よ」などのフレーズが散りばめられている。
4. シナリオ進行例(中盤)
1. 迷路突入
・PCが廃都の大通りを奥へ進むと、壁や建物が連結してラビリンスが形成されている。
・行き止まりや鏡トラップに苦戦し、〈知覚〉・〈工学〉などの判定を駆使しなければならない。
2. 制御室発見
・プレイヤーは操作盤を試行錯誤し、一部エリアの配置を変える。
・成功で新たなルートを開拓し、中枢部への道へ近づける。
・失敗や運の悪さが重なると、パーティがバラバラになり、一時的に孤立する恐れ。
3. さらなるヒント収集
・壁に書かれた爪痕メッセージ、アイテムや古文書の断片を得て、「背面を覗く」「光線を2つの鏡に同時に当てる」等の攻略手順を把握。
4. 次ステージへの移行
・最終的にラビリンスを抜けるか、中枢付近の入口を見つける → 終盤パート(第5部)へ続く。
5. GM向けアドバイス
1. 演出の強弱
・中盤はやや難度を上げ、プレイヤーに探索・ギミック攻略を集中させる。
・敵モンスターを適度に出すか、あえて最小限にして謎解き重視にするかは卓の好みに合わせる。
2. パーティ分断やタイムリミット
・背後に迫る闇の存在(アンデッドの群れ、呪術の波など)を感じさせ、「早く迷路を抜けなければ」と焦らせる演出が効果的。
3. 伏線の見せ方
・伏線を発見するのは決して強制ではなく、見逃しても進行できるようにするのが無難。
・ただし、周到に探索したPCにはメモのより詳細な文言(例えば「正面の鍵は偽り」「背面を覗け」など)が見つかるご褒美を与えると良い。
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