第3話 TRPGの序盤シナリオ

1. 導入

(A) 舞台設定

・舞台: 王国の辺境に位置する“蒼碧(そうへき)の廃都”。かつては魔術と錬金術の融合により繁栄を誇ったが、突如として滅び、数百年もの間放置されている。


・噂:

 1. 影を操る秘術が廃都全体を包んでおり、行く者に錯覚を見せる。

 2. 廃都の中枢は厳重な封印が施されていて、真に勇敢な探索者しか辿り着けない。


(B) PCの目的・任務

・任務例:

 1. 王国図書館からの依頼で、「失われた書物」を回収する。

 2. 冒険者ギルドから派遣され、廃都の封印を解く手掛かりを探る。

 3. 個人的動機(古代秘術を学びたい、失踪した師を探したい等)を組み合わせても良い。


・PC到着シーン:

 ・遠くからでも廃都の巨大な門が視認できる。周囲はうっそうと茂る森や崩れた石畳が続き、人気のない不気味な空気を感じさせる。


(C) 雰囲気づくり

・GMは薄暗い雲や風に揺れる枯れ草の音などを演出し、“廃墟の静けさ”と“見えざる影”の不穏さを強調してください。

・プレイヤーが「何かが背後で動いているかも…」と感じ始める程度がベスト。まだ大きな敵は登場させず、序盤の空気づくりに徹しましょう。


2. 序盤イベント

シーン1:「廃都入口の番人」

・場所: 蒼碧の廃都の正門付近

・概要:

 1. 巨大な石造りの門が半ば崩れた状態で放置されている。

 2. 門の両側には骸骨兵やゴーレムらしき守護が立ちはだかる。

・イベントの進め方:

 ・〈知覚〉判定、あるいは〈魔術知識〉・〈工学知識〉で「これらは古い防衛機構だ」と気づくPCもいるかもしれない。

 ・選択肢:

  ・戦闘: 正面突破で守護を倒す。

  ・回避: 〈工学知識〉や〈遺物操作〉でゴーレムの“制御装置”を停止させ、戦闘を回避。

  ・隠密: 〈隠密〉や〈交渉〉(騙す)を駆使し、守護をやり過ごす。


・結果例:

 ・勝利または回避すれば門をくぐれる。

 ・GMはプレイヤーの選択に応じて消耗状況やアイテム消費を管理し、次へ進ませる。


GM注: 伏線的要素

・門の一角に奇妙な紋章が刻まれており、そこにうっすらと影が揺らいでいるように見える。

・紋章を注意深く見たPCが〈魔術知識〉に成功すれば、「影を増幅させる魔法陣の一部」と分かる。ただし詳細はまだ不明。


シーン2:「朽ちた大通り」

・場所: 廃都の中心を貫くかつてのメインストリート。建物群の壁は半壊し、地面にはところどころ穴が開いている。


・不自然な“影”のシミ:

 ・石畳の表面に人の形をした影がこびりついている。あたかもそこにいた者が消えたかのよう。

 ・PCが上を見上げても特に屋根や木陰はなく、なぜ影が映っているのか分からない。

 ・〈知覚〉や〈呪術解除〉に成功すると、「これは幻覚か一種の魔術的残留物」と推測可能。


・足元が沈む感覚:

 ・プレイヤーが気を抜いてシミを踏むと、一瞬足がズブッと沈む錯覚を覚える(実際には落ちない)。

 ・ホラー演出: “幽霊に足を引っ張られる”ような感覚として描写し、プレイヤーに不安を与えるだけのしかけ。現状ダメージはない。


GM注: 伏線的要素

・PCがここで「影とは何か?」と疑問を抱くよう誘導。

・後に中盤シナリオで分かるが、廃都全体を覆う“影の魔術”が錯視や幻影を発生させている。


3. 序盤の伏線

(A) 奇妙な落書き

・描写: 廃墟の壁、柱、瓦礫などにかすれた文字が刻まれている。内容は断片的でバラバラ。

・例:

 ・「私の影は私を裏切る」

 ・「薄暗い道では背後を疑え」

 ・「光が当たらぬ場所にこそ、門が開く」

・解釈:

 ・TRPG上: “影の呪術”が人間の影を操り、錯視や幻覚を見せることへの警告。


(B) メモ断片(「廃都中枢の構造」)

・配置箇所: 大通り脇の倒壊した建物にある書斎跡、あるいは放置された荷車の中など。

・内容:

 ・「ここに入ったら最後……外からの扉は見当たらぬ……

  内部の装置を動かさぬ限り、出口は見つからぬ……」

・解釈:

 ・ゲーム内では「廃都の中枢は外側からアクセスできない構造」「内部で謎の装置を起動しないと出られない」というダンジョンギミックを暗示。


4. GM向け注

1. 序盤の“異常性”は控えめに

・プレイヤーがまだ探索や雰囲気に没頭できるよう、骸骨兵や幻覚シミは探索RPGらしさを演出しつつ、危険すぎない程度に留める。


2. 伏線について

 ・落書きやメモ断片で“影の呪術”や“内側からの開閉”をほのめかしておき、「後々もっと複雑な仕掛けが出てくるかも」と感じさせる。

 ・ここではまだ詳細に踏み込まず、あくまで“気になる”程度で十分。

3. プレイヤーの反応次第で演出をアレンジ

 ・もしプレイヤーが落書きや影のシミに深く興味を示せば、軽い情報(〈知識:魔術〉判定などで「この影は魂を捉える古代術の残滓かもしれない」など)を与える。

 ・興味が薄い場合は「不気味だが無害そう」とするに留め、中盤以降で本格的に影の仕掛けを再提示する。


5. シナリオ序盤の進行イメージ

 1. 冒頭(導入):

  ・PCたちが廃都の入り口に到着 → 門番の戦闘または回避 → 廃都に足を踏み入れる


 2. 序盤探索:

  ・朽ちた大通りを進み、不自然な影のシミに不安を覚える。

  ・軽い戦闘か、幻覚の罠を少し体験する程度で、まだ本格的な仕掛けには遭遇しない。


 3. 落書き & メモ発見:

  ・謎の一端がちらっと顔を見せる。廃都の“内部構造”や“影の魔術”に警戒感を持つ。


 4. 次のエリア(中盤)への導入:

  ・PCが奥へ進むほど、影の呪術や廃都の機械仕掛けが強くなる。

  ・本シナリオ特有の“裏側”や“背後”を意識させる演出を徐々に高める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る