あらすじ
▶あらすじ
主人公・日向あおいは高校入学後の体育祭で事故に遭い、救急搬送されてしまう。幸い後遺症もなく復学できるが、その頃から、毎日のように見る同じ夢と、毎月届く差出人不明の栞入りの封筒に悩まされるようになる。
時を同じくしてあおいは、クラスメートの吉野ひまりが場面緘黙症であることを知る。緘黙について調べながら眠りに就くと、誰かとの夢を見るのだが、起きた時には綺麗サッパリ忘れてしまっていたのだった。
七月。いつもの封筒で朝顔の栞が届く。ふと、宛名の文字に見覚えがあることに気づくあおい。誰の筆跡かすぐには思い出せず、首を傾げながらぼんやり登校していると、荷物を抱えたひまりと廊下の曲がり角でぶつかり合ってしまう。床の上に散乱するひまりの荷物。拾い上げるのを手伝っていると、ページが開いた状態で落ちていたノートの板書が目に飛び込んでくる。少し癖のある丸字は、毎月届く封筒の宛名と同じもの。あの栞はひまりによるものなのか、とあおいが問い質すと、ひまりは視線をさ迷わせるだけで、否定も肯定もしない。そんなひまりの煮え切らない態度に、あおいはつい、「気味悪いからやめてもらえる?」と言ってしまう。傷ついたひまりの表情が頭にこびりついて離れないが、真意がわからないあおいは、発言を撤回することもしなかった。
八月、夏休み。あおいの発言にもめげずに、変わらず差出人不明のまま向日葵の栞が届く。複雑な気持ちで学校の夏期講習に向かうと、教卓の前で教師とひまりがやりとりしている姿が目に入る。何やら単語カードのようなものを見せているひまりに、「そういえばあのカード、吉野の机の横によくぶら下がってるな」と思い至るあおい。ひまりが席を外したタイミングを見計らって盗み見ると、そこには「おはようございます」「さようなら」等の挨拶や、「はい」「いいえ」の返事等が書かれていた。以前緘黙について少し調べていたあおいは、それ自体には特に疑問も抱かなかったのだが……。「ウソだろ……どういうことだよ、これ」そこに書かれていたのは、まぎれもなく、あおいの筆跡によるものだったのだ。
九月、もやもやした気持ちのまま迎えた新学期。栞は相変わらず届き、今月は竜胆。もう一度やめてと言う気にもなれず、単語カードの真相をきく勇気も出ない内に、校内は文化祭準備モードへ突入。ひまりと同じ準備班に配属されたあおいは、自然と彼女と過ごす時間が増える。やりとりにひまりの持つ筆談ノートを使っていたが、ある時、とある日付より前の筆跡があおいとひまりのものばかりであることに気がついてしまう。そのページは、春の体育祭のあった日。「自分はあの日、何か大切なことを忘れてしまったのではないか」「自分とひまりには何かあるのではないか」そう考え、ひまりに直接尋ねに行くも、「ごめんなさい」の単語カードを押しつけられ、そのまま逃げられてしまう。あおいの字で書かれた「ごめんなさい」のカードを見つめながら、ひまりとの間にはやはり何かあることをあおいは確信する。
十月。文化祭当日に、パンジーの栞が届く。これまで意味不明だったこの届け物も、何か意味のあるものに思えてきたあおい。きちんとひまりと向き合おうと決心するも、いざ登校してみると彼女の姿はどこにもない。欠席とはきいていないため校内を探し回り、最終的に保健室に辿り着くと、ひまりはそこで手話の本を眺めていた。鈍器で殴られたような衝撃を受け、何かを思い出しそうになるあおい。その夜、あおいは夢の中で、ひまりと親し気に話し、手話やマカトンについて一緒に勉強していた。しかし目が覚めた時には、その夢の一切の内容を忘れてしまっていて、あとには頭痛だけが残っているのだった。
十一月。カランコエの栞が届く。なんとはなしに花言葉を調べてみると、検索結果は【たくさんの小さな思い出】。それを目にしたあおいは、意を決してひまりを隣町の大型図書館へと誘う。誘った時のひまりの意味深な態度から、彼女が来ない可能性も考えながら当日待ち合わせ場所へ向かうと、予想に反し、ひまりは先に待ち合わせ場所で待ってくれていた。心躍る感覚に既視感を覚えるあおい。図書館に着くと自習ブースへ向かい、ひまりに筆談ノートを出すよう促す。ひまりが準備している間、あおいは彼女の筆箱の中から、かつて自分が書きやすくて一番気に入っていたシャーペンを見つける。覚悟を決めたあおいは、そのシャーペンを手に取り、ひまりの開いてくれた筆談ノートのページにこう記す。
「もしかしてオレたち、付き合ってた?」
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