第2話 あの少年は

 小鳥のさえずりが聞こえる清々しい朝、昨日の雨が上がったので子ども達がよろこんで外へと飛び出す。そんな朝なのに、二人の空気は異様に重く、異様に軽かった。


「じゃぁ...シスター、行ってきます...。」


「おぅ!ロッシャ!行くぜ!俺!」


「えぇ...行ってらっしゃい。ふふ、ってハオ!私その呼び名は苦手なんだから、せめてルーシャって呼びなさい!もう、」


 この地域では、名前によって略称や訛を付けて呼ばれる伝統がある。そして、二人はあの微笑みを忘れまいと心に誓った。なんせ自分たちを育ててくれたお姉さんだ、忘れられまい。孤児院皆の母親であった先代シスターは現在は老いて皆の協力で介護を受けている。


「なぁ、ハオ。」


 孤児院を出て歩き出した二人だったが、ルイスが足を止めてハオに問う。


「俺達は…何をしに旅に出るんだろうか、やっぱり皆が心配なのもあるし...。」


 それを遮ってハオは返す。


「お前は旅の目的なんかなくていいだろ!だって、に入るために出たんだろ?!…」


 その言葉に背中を押されるかのようにルイスの緊張と不安が一気に解ける。

 この世界では魔力を持って生まれるのが一般的で、ハオのような魔力が無いと言っていい薄さの存在はごくまれすぎた。もちろんルイスには魔力が携わっているので、彼は王国騎士団の永級魔術師になるつもりであった。


 だが、ハオは...。


 続く

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