第3話 神速
ダンジョンに入ってすぐの第1階層。
現れたのは、スライム!
などの低級の魔物たちだった。
ここはもう簡単に突破してしまった。
オレは何もしてない……というか出番がなかった。
こいつらでも再生能力は持っているが、再生速度が遅いし、既に冒険者たちによってコアの露出と撃破という戦術が開発されている。
なので普通の魔物討伐と大して変わらないのだ。
しかし、このダンジョンが現れた当初は当然再生能力のことなどわかっておらず、スライム1匹倒すのに数人がかりでやっと対処できた……とソニアから聞いている。
魔物たちの攻勢に危機感を抱いた王国軍は、大量の兵力を投入し、多数の犠牲と引き換えにようやくダンジョン深層へと魔物たちを追い払った。
というわけで、ダンジョン攻略は民間の冒険者ギルド頼みというのが現在地というわけだ。
話が脱線したが、そんなわけで2層目へ向かう。
最初は引き続き低級ばかりだったのだが……。
「来たぞ、ゴブリンが!」
「そろそろ中級がお出ましってところね〜」
わらわらと湧いてくるかのように現れたゴブリンの群れ!
まあ中級といってもこいつらはまだレベルが低いほうだ。
この4人ならすぐ片付けるだろう。
「行きますよ、ラファウさん!」
「オーケー、ソニア!」
騎士のソニアとタンクのラファウが前衛となって突撃する。
ラファウが最前列で敵攻撃を防ぎつつ大きな槍で応戦。
その隙にソニアがまるでダンスでも踊るかのようなステップと剣さばきでゴブリンたちを次々と切り刻んでいく。
その間にレックは自分の前に魔法陣みたいなのを展開中……。
やがて切り刻まれたゴブリンたちの体から紫色の宝石みたいのが出てくるのが見えた。
そう、あれがコアなのだ。
その瞬間にレックが魔法陣に右拳を打ちつける。
「どっせいー!」
同時に魔法陣から放たれた十本くらいのレーザーみたいなのが瞬時にコアを撃ち抜いたのだ!
「こっちもいくぞ!」
ラファウはレックに向かって叫ぶと同時に槍の連撃で残りのゴブリンたちからコアを露出させた。
「りょーかいだ、ラファウの旦那ぁ! オラッ、もう一丁!」
レックは今度は左拳を打ち込んであっという間に全てのコアを撃ち抜いた。
「なんだよどーってことないじゃん」
「レックさん、まだです! 後続のゴブリンたちが現れました!」
「マジかよ……ソニアちゃん、旦那と少しの間だけ食い止めといてくんねーかな?」
「承知しました!」
レックは一旦消えてしまった魔法陣を再構築し始めた。
仕方がない、ここはオレがやりますか。
……いや、実はちょっと疼いてきたというのもある。
一番後ろで状況を見守っていたオレは、そろりそろりと一歩ずつ前に出ていく。
同時に、ソニアから事前に手渡されていた、魔力耐性のある繊維で作られた手袋を装着。
そしてソニアが数体のゴブリンたちを切り刻んでいく瞬間に走り出す。
「そら! コアを集めといたからヨロシク!」
高速で走りながら飛び上がり、オレは手から数個のコアをソニアに向けて投げつけると、彼女は一撃で全てを破壊した。
「アイツ、いつの間にゴブリンたちの背後に!」
「それはいいけど前危ないよー!」
リラの声で前を向くと、そこには棍棒を振り上げて待ち構えていたゴブリンが。
「おーっと!」
オレは着地と同時に身を翻しつつ攻撃を避け、そのままラファウを飛び越して一旦自陣に戻った。
「オラァ! これでも喰らえ!」
その間に残りのゴブリンはラファウとレックで倒したのだった。
そしてレックはオレに向かって半ギレ顔で怒鳴ってきた。
「テメェ……最初にオレの邪魔すんなっつったよなぁ!?」
「そんなこと言ったって、ソニアが切り刻んだときは魔法陣が間に合ってなかっただろーが」
「あぁ!? ガキが、今なんて言った?」
「やめてください2人とも! まだ終わっていない、というか目標物はこれからなのですよ?」
「おいガキィ、ソニアちゃんのおかげで命拾いしたなぁ。だが次邪魔したらその場でクソ殺すから」
「あーそうかい」
「それにしてもあの超スピード……それに一瞬でコアをかき集めるテクニックというか。ソニアが切り札として呼んだのもわからんではない」
「ご理解していただけたのですね、ラファウさん」
「それはともかく、あたし今日は何もやってないんだけど〜!」
「ヒーラーが暇なのはいいことじゃないか」
「ここで少し休息して回復してもらいましょう」
「おれは別に疲れてないけど」
「目標物は段々と上の階層に向かっているようですから、いつ遭遇してもいいように可能なときに回復しておくべきです」
ソニアの指示で回復タイムとなったが、オレは全く問題ないので時間を持て余している。
ちょっと奥の方を見てくるか。
アイツらの近くにいるのも疲れてきたし。
しかし途中で何となく不穏な気配を感じたオレは、リードを取るときと同じ歩行……横向きで左足を後ろに交差させながら慎重に進んでいく。
理由はもちろんイザとなれば即座に自陣へと戻るため。
そしてこちらへ近づいてくる振動と、一瞬キラッと光って上から振り下ろされる物を感知したオレは、全力で戻る。
その直後、ドーンッ! と地鳴りのような音が。
オレが元いたところには巨大な斧が突き刺さっていた。
現れたのは、5メートルはありそうな牛の頭をした魔獣、つまりミノタウロス!
「くそ、もう現れたか!」
「コイツが例の目標物なの〜?」
回復を終えたばかりで少し混乱気味のパーティメンバーたちとオレに向かって、奴はいきなり立ちはだかったのだ。
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