嫁取物語~婚活20連敗中の俺。竜殺しや救国の英雄なんて称号はいらないから可愛いお嫁さんが欲しい~
月夜乃 古狸
第1話 初っぱなからフラれました
月夜乃古狸と申します
初めての方、別作品からの読者様も、ようこそいらっしゃいました。
久しぶりの新作をようやく投稿できるようになりました。
当作品はコメディ系のライトファンタジーです。
辺境伯家の跡取りにしてバカ強いのに何故かモテない主人公の婚活模様を描いた作品となります。
重いテーマも無ければ人生の教訓もありませんので、どうか軽い気持ちで楽しんでいただけると嬉しいです。
それでは、物語、始めます
--------------------------------------------------------------------------
学院の談話室で、罠に掛かったマウリグマのようにウロウロしてしまっている。
だって、落ち着かねぇんだもの。
俺は今、とある令嬢に呼び出されてここに来ている。
学院の談話室は10人ほど入れる大部屋とその半分ほどの大きさの小部屋に別れていて、防音措置の施された個室になっている。
といっても、内側から鍵を掛けることはできないので悪いことや、いかがわしいことができるわけじゃない。
いや、やんないけどね。
……いかがわしいことにはたっぷり興味あるけど。男の子だもん。
「うん、大丈夫なはず。いつも普通に話しかけてくれてたし、印象だって悪くない、はずだ。書状を渡したときも嫌な顔はしてなかった、よな?」
口に出すたびにドンドン自信がなくなってくる。
そうして、不安がピークに達しようとしたタイミングで、談話室のドアが叩かれた。
「ど、どうじょ」
噛んだ。ハズい。
頭を抱えたくなるのを何とか堪え、平静を装いつつ扉が開かれるのを待つ。
「し、失礼いたします。お呼び立てしたのにお待たせしてしまって申し訳ありません」
入ってきたのは俺と同じ歳の令嬢だ。
小柄で幼さの残る顔立ちに、ややぽっちゃりめの穏やかな雰囲気の女の子。
学科は異なるが、共通科目で会うとそれなりに話をする間柄でもある。
「いや、俺、じゃなくて、私が早く来すぎただけだから気にしないでくれ」
できるだけ穏やかに聞こえるよう、意識しながら笑みを浮かべてみせる。
……顔は引きつってないよな?
「あの、父から書状を預かっています。先日いただいた申し入れに対する返事だと」
そう言って令嬢、スリエミスさんが差し出したのは、立派な押し飾りのついた封筒。
そんな物を申し訳なさそうな顔で差し出され、もの凄い嫌な予感がする。
ってか、この態度って、やっぱり。
そう思いつつ、封筒を受け取ってひっくり返すと、しっかりとアドミース子爵の紋章が封蝋に押されている。
手と背中が汗で気持ち悪い。
恐る恐る封蝋を割らないように剥がし、入っていた紙を開く。
『レスタール辺境伯令息フォーディルト・アル・レスタール殿』から始まる書面の文章を上から下まで一字も見逃すことなく最後まで読み切った俺。
「はぁぁぁぁ~……」
盛大に溜め息を吐いて膝から崩れ落ちてしまう。
マジかぁ。
今度こそと期待していた分、心底落ち込んでしまう。
「あ、あの、フォーディルト様は素晴らしい方だと思います。で、ですが、子爵家の三女でしかない私では荷が勝ちすぎて、その……」
深々と頭を下げながらスリエミスさん、アミドース子爵令嬢が謝罪の言葉を繰り返している。
この状況を人に見られたら、絶対に俺が彼女に無理矢理迫って、必死に逃れようとしているように思われるよな?
でも、実際は俺、全然悪くないと思うんだよ?
「気にしないでください。元々事前の打診もなく一方的な申し入れだったので、子爵閣下としては精一杯の礼儀を尽くしてくださいましたから。断られたのは残念ですが、これも縁というものでしょう。学院では変わらず接していただけると助かります」
泣きたいのを堪えてなんとか笑顔を作り、できるだけ穏やかに言う。
その言葉にスリエミスさんはホッとしたのだろう。肩の力を抜いてぎこちない笑みを見せてくれた。
彼女としては、実家よりも遙かに爵位の高い辺境伯家令息からの求婚を断るのは相当な勇気が必要だったはずだ。
それでも、書状を人に届けさせるのではなく、自分自身でこうして手渡してくれたのは彼女なりの誠意なのだろう。
そう、この日、俺はフラれたのだ。
何度も頭を下げながら談話室を退出していく彼女を見送り、なんとか椅子に座ると、もう一度盛大な溜め息を吐いて机に突っ伏した。
今回はいけると思ったんだけどなぁ。
辺境に近い田舎の子爵領の三女。
本人は素朴であまり飾り気のない、割と地味目の大人しい娘だ。
辺境に対する偏見も少ないし、三女であれば家の
なにより、いろいろと偏見の目で見られることの多い俺にも、普通に話しかけてくれてたし、会話だって盛り上がってた、と、思ったんだけどなぁ。
もっと時間を掛けて、仲を深めてから申し込めば違う結末になったんだろうか。
けど、そんな悠長なこと言ってたら、別の奴から縁談申し込まれちゃうかもしれないし。
あっ、念のために強調しておくけど、彼女のことは条件だけで選んだわけじゃないぞ。
美人ではないかもしれないけど、優しいし、話していて落ち着くし、笑うと可愛いし、本気で好きだったんだよ。
だからこそ、本気で婚姻の申し入れを当主であるアドミース子爵に送った。もちろんそのことは俺の親父も承知している。
今回渡された返信では、キッパリと断りの言葉が記されているから、よっぽどのことがない限り再度申し入れをすることはできない。
それは仕方がないことなんだけど、彼女とは今後も変わらず接するのは無理だろうなぁ。
向こうは気まずいだろうし、俺も同じように話しかけたりするのは難しい。
はぁ~。
また婚活、やり直しかぁ……。
--------------------------------------------------------------------------
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
こんな感じのお話ですが、とりあえず本日中に10話まで一気に投稿
そのあとは、ストックが無くなるまで、多分1ヶ月間は毎日投稿します。
キッチリと完結まで書き切るつもりですので安心して読んでくださいw
感想や評価、レビューはもちろん大歓迎です
作品を執筆するなによりのエネルギーとなりますのでドシドシ送ってくださいませ(@_@)
ただ、多分感想返しはあまりできないと思うので、あらかじめお詫び申し上げます。
それから、他にも書籍化作品を始めいくつかの作品を投稿していますので、そちらも是非一度読んでいただけると嬉しいです。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます