それでも、愛してる

望月 葉琉

それでも、愛してる

この髪、この瞳、この顔。全ての要素が、わたしを今の地獄へ突き落とした。


 嘗て愛した人は、もういない。わたしのせいで、殺されてしまった。

 国の施政者は、わたしを憎む。わたしを愛した、貴方のせいで。

 女王の側近は、わたしを妬む。殺したはずの、わたしを愛した人に捉われ、女王が自身をかえりみてくれないから。


 哀れな女王は、もう何も見えていない。

 哀れな側近は、もうわたししか見えていない。


 今でも貴方を、怨めないわたしは、果たして一番哀れだろうか。

 愛されなければ、こんな目には遭わなかった。愛した人が、貴方でなければ、こんな目には遭わなかった。愛してくれた のが、貴方でなければ、こんな目には遭わなかった。

 それでも、貴方への想いを止められないままのわたしは、果たして不幸な娘だろうか。


 国は荒れ、女王は狂い、件の娘は檻の中。もしもわたしが、再び陽の下に立つことができるようになったとしても、民草はわたしを詰るだろう。要人を唆し、国中を掻き乱した魔女であると。

 こんな髪色でなければ、こんな瞳でなければ、こんな顔でなければ。このようなことには、ならなかっただろうか。国は優秀な臣下に恵まれた賢き女王により、安寧を約束されていただろうか。

 ……貴方はわたしを、愛さなかっただろうか。


「君は生きて、幸せになって」


 貴方の遺した、最期の呪詛が、今日もわたしを苛んでゆく。

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それでも、愛してる 望月 葉琉 @mochihalu

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