金曜日
今朝も今朝とて満員電車に揺られている。でもいつもと違って今朝は目の前に川田さんがいる。電車に乗ったらすぐに川田さんがいる位置へと移動しそのまま川田さんを壁際へと運び俺が満員電車の押し寄せる人達からの壁となった。
「おはようございます」
お互い静かな電車の中で挨拶を交わす。
昨日遅刻して会社に向かう途中で川田さんがお礼がしたいという事で連絡先を交換した。とりあえず朝は急いでいたので夜に連絡するという事で仕事が終わってから連絡を取り合ったのだ。
そこで朝は心配なので一緒に行かせて欲しいと申し出た。申し訳ないと川田さんは言ったが、どちらにせよいつもの電車に乗るのならば一緒に行くのと一緒だと押し切った。1駅だけ川田さんの方が先に乗ってるのでいつもの車両のいつもの場所で待ち合わせた。
揺れる度に押し寄せてくる人の重み。正直苦しい。川田さんとその間に前に背負った俺のリュックとあり腕を伸ばしているため強制腕立て伏せ状態だ。たまに負けてりゅっくで川田さんを押しつぶしてしまう。頑張れ俺!筋トレと思え!
「あ、あの……」
「うん?」
下を向くと川田さんが上目遣いで(顔が一つ下にあるからそうなってしまうのは自然なのだが)
「荷物、私が持ちます」
そう申し出てくれた。
内心で助かったと万歳していた。途中の駅で人の動きがある時にリュックを素早く降ろし川田さんにお願いする。荷物が下の方に行くだけでスペースが助かる。
ホッとした瞬間!
ドドドドドッと人が押し寄せて来た。さすがに俺は負けた。でも川田さんだけは守る!!と肘を壁についてなんとか川田さんを守った。
おぉ?リュックが下に行って腕を伸ばしてのところから肘を曲げてのガードになったので川田さんとの距離が一気に近づいた。顎の下に川田さんの頭がちょうどある。
うわぁ、いい匂いがするぅ。やばい!俺臭くないかな?俺の下に川田さんの頭があるって事は俺の息も思いっきりかかってないかな?臭かったらどうしよう……
やばい!そう思って俺はなんとか顔を右に背けた。隣のおっさんと目が合ってエッ?て感じで驚いている。スマン!おっさん。
ガタンッ!
電車が俺の方へと揺れた。その瞬間!川田さんがバランスを崩して俺に寄りかかったのと同時に俺の足を踏んで慌てて離れた。
「す、すいません」
「いや、
「えっ?」
驚く川田さんだったが、悪いが身体が一瞬でも密着してふにゃんと柔らかい感触を感じてしまい心拍数が一段と上がりまくっているのは俺の方だ。
駅について人の流れと共に電車を降りて二人ともはぁぁぁっとため息が出た。同時だったのが面白くてお互いを見あってふふっと笑いが込み上げた。
お互い電車の中で緊張していたようだ。二人で改札口を出て会社に向かう。
「あの
「そうそう、あの後すぐ注文したんですよ。翌日配達だったんで昨日届いたところなんですよ。革靴の
「つま先が金属になっていて重たい物が落ちてきても大丈夫になっているんですよ。急に建築現場に出る事もあるんで持っていた方がいいかなって前々から思っていたんですよね。いい機会になりました」
ニコッと笑って言うと
「重たい物って!!!否定できませんけども!ていっ!」
そういって川田さんは俺のつま先を踏みつけて川田さんはぷいっとほっぺを膨らませて拗ねたけども可愛い。
「あ、お礼をしたいってお話がまだ済んでいないんですけど…何がいいですか?」
「お、まだその話生きてたの?」
「はい!何かお礼をさせてください!」
目をキラキラして俺を見つめる川田さん。可愛すぎる。
「う~ん、じゃ明日は土曜日だよね?川田さんは何か用事ある?」
「……ないですね……」
「そっか、んじゃ映画付き合ってよ。俺みたい映画があるんだよね」
「分かりました!映画奢ります!」
そういう事で明日の土曜日に二人で映画を見に行く事になった。いつもなら辛い金曜の残業でも翌日に楽しみがあると思ったら頑張れた。
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