2章2の4
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
初めわたしが今までの
しばらくすると、
さすが
これでわたしにとっての気がかりの一つが前進した。
これが昨日の夕方の話。今は翌日の昼を過ぎたころである。
今もまた、
最後の授業の内容を思い返してみる。
セイのことを雑談し、授業を始めてからは主導権の獲得について教えを受けた。ここでお師匠を
そしてさらに、戦いたいか、とお師匠に問われ、わたしは古典を引用して答えた。
「
この格言は、唐の国の兵法の大前提であり、間違えようのないほど常識と言っても過言ではないだろう。
同じ考えが頭の中を、ぐるぐる、ぐるぐる、と駆け回る。あまりによく空回りするものだから、本当に目が回りそうだ。
「んー、気分転換が必要だわね」
背伸びをして独り言を口にすると、
セイの部屋は
部屋を出て廊下を歩く。突き当りが渡り廊下へ通じる引き戸だ。
緩やかに流れる風の冷たさが凝り固まった頭に気持ちいい。渡り廊下は板敷きの床と屋根だけで壁はない。
庭を見ると小さな池のほとりにある松が
「偽りを映す
ひとしきりその
今は
「寒いわね。行こうかしら」
いそいそと渡り廊下を進み、隣の棟の戸を引き開けて入った。
戸を閉め向き直る。廊下の突き当りの角。そこから現れた見覚えのある姿をみて
藤色の
「お、
細身で引き締まった体格。優美な立ち姿。気品ある顔立ち。
「
「
「それはだな……」
「
大声の主は
「おう、
「探したぞ、ではない!
「
「言ったであろう、お主、
「そうではありません。どうして
「わしが会いたいと思ったのだから、わしが会いに行ってもよかろう?」
「そういうことではなく……。まさか、一人でお越しになったのですか」
「そんなわけあるか。ちゃんと共を連れてきたぞ」
「では、そのお共はどちらに?」
「なんやかんや申して付いて来なんだった。今は、
「お供の身になって下さい。いくら主人からみて家臣の屋敷であろうと、勝手に入るわけにはいかないでしょう。
「お主も
「ちょっと待って下さい。
「さよう」
「さよう、ではありません! どちらもまだ
「どちらも賢いゆえ、別に構わんがのう」
「もしや、お供はその二人だけでございませんよね」
「二人いればお供など十分であろう?」
「もし道中、賊に襲われたらどうするのです!」
「わしがおる」
「わしがおる、ではありません」
「なに、見くびるな。賊が来ようともわし一人で
「主人が警護の者を守ってどうするのですか! 話が逆さまでございます」
「相変わらず石頭だのう。わしは強いから大丈夫だ」
「お言葉ですが、それがしでも二十本に一本は取れますぞ」
「
「
「
「数えておったのか?」
「ええ、数えておりました」
「ではやはり、お主の言った二十本に一本は、分かったうえでの大風呂敷であったということだのう」
「
「あぁ、
「この通り、
「えぇ……。なんというか、以前お見かけしたときとはずいぶん雰囲気が違うわ」
「
「一人は
家の者たちは、はっ、と言うとそそくさとそれぞれ向かって行った。
家の者たちが完全にいなくなるのを確認して、
「で、
「おっ、姫がおるのにその口調でええのかのう」
「
「さようか。その方がわしも気楽でよいがのう」
「では、答えてもらおうか」
「お主に会いに来たのは半分本当だ。
「もう半分は?」
「何やら姫が半死半生の者を助けたと聞いてのう。それを見に来たのじゃ」
「まぁ、
「ほう、その者はセイと申すか。案内してくれるかのう?」
「はい、こちらです」
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