1章3の2
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
対応に出てきたのは住職である
互いの紹介と時節の挨拶に続き、先に
「あれらの書は拙僧の兄弟子が書かれたもので、申し訳ないが外に見せておりません。
断られてしまった。しかし、それも想定の内で完全否定ではないことが
「突然の訪問に無理なお願いをして申し訳ございません。わたくしはたびたびこの
「何をおっしゃるか、姫様よ。本院は
「ありがたいお言葉です。また寄らしていただきます」
「いつでもお待ちしております。本院には
あっ、これは今から寺同士の話し合いをするので、部外者の私には席を外してほしいという事かな。
「はい、ではこれにて失礼して早速参拝したいと思います」
そう言うと
本堂より出ると南の方角に
参拝を済ませて
さて、
もと来た道を戻れば本堂に戻るが、途中で細い道が枝分かれしている。その道は寺の背にある山裾の方に続いている。
何かあるのだろうか?
細い道といえど、砂利が敷かれてしっかりと整えられている。なのでただ山に向かう道ではないだろう。
二、三度曲がった道を抜けると少し広い空間に出て、四基の
ここも砂利がきれいに整えられている。掃除もきちんと行き届いており、墓前には香花が
誰のお墓であろうか。ここにあるからには
ともかくも目を閉じ、念仏を唱えて祈った。
――
唱え終え目を開けると、隣に一人の僧が立っていた。
それにしても、いつからそこにいたのか全く気が付かなかった。
「
『
「ほう、これは
僧はそう言うとまっすぐ
切れ長の目にすっと通った鼻筋、キリリと薄い唇。こういうのを美形と言うのだろう。
「あの、何かおかしなことでもありましたでしょうか」
何とか美貌に
「いや、何でもない。そちは
「は、はい」
私を「姫様」ではなく「姫」と呼ぶからには、少なくとも
「
「
「うむ、姫は学問がしたいか?」
「わたくしは未熟者ですから、まだまだ学ばなければなりません」
「師が欲しいと」
「わたくしには必要です」
「そして、内には大いなる願望があると」
「はい、仰る通りでございます」
「笑わないで下さいませ」
「なに、笑わぬ。姫は軍師になって何を成す」
「
「戦いの無い世を作る、と?」
「その通りにございます」
「しかし、そのためには戦いが必要だが」
「はい。結果的に最も流血が少ない道を探します」
「
「太平を取ります」
「それと同時に
「それでも
「もとります。されど太平は譲れません」
「なるほど、よくわかった。
「えっ」
「ところで姫は
うぅ。
「その通りでございます」
「姫は
「
「左様か。まぁこれはどうにかなろう。今言うても仕方あるまい」
それはどういうことか聞こうとした
「それ、
有無を言わさぬ勢いに促されて
本当に不思議な人だ。顔の美形もさることながら、その所作、
そんなことを考えていたら今更に気付いた。相手の名を教えてもらっていない。
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