1章2の2
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
怪我人のために寺の離れが
「
「姫様、落ち着かれよ。まずは風呂にて水で体を清めて差し上げましょう。そののち、
「まず体を洗うのですね。ありがとうございます」
そう言って立ち上がる
「姫さま、ご自身でなさらずとも代わりにわたくしがやります」
「いいえ、お
「そうでございますか。普通の姫ならばそこまでいたしません」
「ありがとう、お
うつむいたお
「さぁ、こうしてはいられないわ。やるわよ」
井戸の水では冷たかろうと、
ボロボロになった服を脱がせてその下が露になると皆の表情は険しくなった。ここにも
「姫様、これでは
「わかりました。それでもわたしはあの者を
「ですが、万に一つもないほどと存ずる」
「はい、この者はわたしが近づいたときに声を上げたのです。それは生きたいと言うことですわ。わたしはそれを受け止めました。なればわたしはこの者が生きたいと願う限り、信じて治療にあたらねばなりません」
「ええ、そうですとも。つまらぬことを申し上げた。拙僧も僧医の端くれ、全力を尽くしとう存じます」
「頼りにしておりますわ」
「ところでこの者、少年のようですな。体の肉付きや残った皮膚のからするとまず間違いないと存じます。まだ若い。姫様と同じくらいと拙僧には見えます」
「わたしと同じくらいですか。なお一層
「ではこちら、灰を水に溶いた上澄み、
漬し終わると、次は包帯が巻かれる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少年を
昨日、
「姫様、今、戻りやした」
荷物を背負った
「
「母上はなんて言っていたかしら」
「へい。事情は分かったから姫様のなさりたい様にして構わないとのことでございやす」
「さすが、母上。話がわかるわね」
「姫様、あまりご心配をお掛けになってはいけないでやす」
「そう、ね。気を付けるわ」
「ところで姫様、あの少年はどうなりやした?」
「一時ほど前にかすかにまぶたを開けたけれど、それっきりだわ」
「目を覚ましなすったでやすか」
「意識があったかは分からなかったわ。わたしの呼びかけにも反応しなかったわね」
「
「何とも言えないけれども、悪い兆候ではないだろうとのことだったわね」
「そうでやすか。悪くならないのならば良くにしかならないでやす」
「ええ、そうね。
離れの玄関に着くとお
「
「かたじけないでやす」
「
「いえ、これは……」
そう言いかけたとき、奥から
「おぉ、
「
そう言うと
そして、
「姫様、これらは
「そうだったの。でも何で卵をそんなに」
「それについては拙僧から説明申し上げようと存ずる」
「鶏の卵の白身は漢方で
「発熱を抑えるのですか」
「ええ、姫様、
「そうでございましたか。では、あの少年も熱を出さないようにすればよいのですね」
「左様です。姫様。さすれば期待が持てるものと存ずる」
「ありがとうございます」
「ところで
「運がよかったでやす。何せ今日は
「あぁ、そうだったわね」
「では拙僧はこれにて。すぐに
「ええ、もちろん、いたしますわ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます