第3話 愛する事を
琥珀が藍のもとに来て、数カ月が経った。ずっと二人で暮らしていたかのような揺るがない何かが築かれ始めていた。
「藍さ。」
「なんだ。」
「藍の家族ってどんな感じだったの?」
「何千年前の話だからな。あまりよく覚えて居ないが。」
「いいよ、話して。」
生まれながらに怪物な事。人として生きれない辛さ。家族に捨てられて、食べ物とも言えないゴミを食べた事。段ボールを敷いて、飛んできた新聞紙を掛け布団にして寝たこと。自分を庇って死んだ彼女の事は……言えなかった。言葉にする程傷は癒えてなかった。その代わり、初めて家族を持ったこととか、子どもが生まれた時の感動とか。けれど皆、先に死んだとか。
「そっか。思った以上の孤独を過ごしていたんだね。」
琥珀は泣いていた。藍の心の痛みを感じて。琥珀はその小さな身体で藍を抱きしめた。嗚呼そうだ。こんなにも温かく愛しいものなのだ。ずっと忘れていた。藍の目にも温かい雫が伝っていた。
「藍。」
「なんだ。」
「愛する事を辞めないで、諦めないで。」
脈絡はなく突拍子のない発言だった。けれど、藍の心に深く刺さった。
「…………約束は出来ない。もう失いたくない。」
「そっか。」
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