第2話

風のように生きる理髪師の物語

-第2作目:中学生時代


中学2年生の頃、私は初めてタバコを手に取った。最初は好奇心だった。だが、白い煙を吸い込むたびに、自分が少しだけ大人になったような気がした。そしてその背伸びは、すぐに日常となり、次第に「悪い」とされることを片っ端から試してみるようになっていた。


友達と連れ立って夜の街を歩き、時にはいたずら半分で大人たちを困らせるようなこともした。警察に名前を聞かれるたび、住所を言わなくても「またお前か」と呆れたような顔をされる。それが何だか誇らしかった。「この町は俺のものだ」と、本気でそう思っていた。


けれど、心の奥底にはいつも小さな罪悪感があった。父親は体が弱く、家では弟と二人で過ごす時間が多かった。母はそんな家庭を支えるため、朝から晩まで働き詰めだった。

「俺がこんなことをしていると知ったら、母さんはどう思うだろう」

そう思うたび、胸の中で何かがチクリと痛んだ。それでも、仲間の前で弱いところを見せるわけにはいかなかった。


弟は健康体で生まれたが、小さい頃に大きな手術を受けた。その理由を両親はあまり話したがらなかった。ただ、幼い日の記憶の中に弟が泣いている姿がぼんやりと浮かぶ。そして、弟を見つめる母の表情にはいつも心配が刻まれていた。私はそれを横目に見ながら、どうすることもできなかった。


そんな家族の苦労を考えれば、自分のしていることがどれだけ間違っているか分かっていた。それでも、不良仲間との時間は楽しかった。勉強に興味を持てなかった自分にとって、彼らと過ごす時間だけが、自分の居場所のように感じられたのだ。


時々、夜空を見上げることがあった。星が輝く静かな空を眺めながら、「こんな俺でも、いつか何かになれるのだろうか」と考えた。だが、その答えは見つからなかった。

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風のように生きる理髪師の物語 @CHIKARA44

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