第3話 見せたくないよ
朝食を食べ終えたら、本屋へ行く予定だったのだが……うん、完全に予定が狂ってしまった。なぜかって? それは――俺は今、ソファーに座っているのだが……両隣には、俺の腕に抱きついている幼馴染と元カノがいて、背後から妹が抱きしめている。
――ハーレム状態なのだ。
これでは、本屋へ行くことはできない……というか、この3人をどうにかして俺から離さないと、俺は身動きができない! なんだか尿を出したくなってきたし……この状態をキープできるかと言われたら、答えはNOだ。
ああ、どうしてこんなことになってるんだよ!? そんなに昨日の俺は、イカれていたのか? ……昨日の記憶が全く思い出せないし、マジで何があったんだ?
俺は両隣に座っている幼馴染と元カノを見て、ため息をつく。
「これは今、一体何の時間なんだ?」
「お兄ちゃんの匂いを嗅げれて、私イっちゃいそう!」
「おい、朝からイっちゃいそうとか頭のおかしなことを言うなよ」
「大ちゃんの腕を猫みたいに舐めてあげたい!」
「お前まで頭のおかしなことを言うんだな、頼むからやめてくれ」
「大輝はおっぱいが大好きだから、胸を押し当てると興奮す――」
「全員、頭がおかしいことがよ~く分かった」
俺は尿意を我慢するのが限界に近づいてきたので、トイレに行きたいのだが……これではトイレへ行くことは不可能、その場から離れることもできない。
俺は立ち上がろうとするが……腕は抱きつかれ、背後から抱きつかれている状態なので立つことができない。立ち上がろうとすると、背後から抱きつかれている状態なので首が絞めて苦しくなる。
「トイレに行かせてくれないか」
俺がモゾモゾしながらそう言うと、3人はニヤリと笑みを浮かべた。
どうして笑みを浮かべているんだ?
俺は別に変なことを言ったりしていないが……。
その笑顔を見ていると、何かを企んでいるように見えるのだが……気のせいだろうか?
「そんなにモゾモゾして……大ちゃんがトイレに行くなら、私も一緒にトイレに入って、大ちゃんがトイレをしている様子を見てあげる!」
「大輝がトイレをしている姿を見るのは私よ!」
「いいえ、お兄ちゃんがトイレをしている姿を見るのは、私が一番相応しいです」
「幼馴染の私が一番相応しいに決まっているじゃない!」
「元カノの私が一番相応しいわ!」
本当にこの3人……俺のことが好きすぎて頭がイカれてやがる。まさか、トイレをしている姿を見たいとまでは思っていなかったけど……想像の遥か上を越えてきたな。
つうか、俺がトイレをしている姿を見るのは私が一番相応しいってなんだよ!
そんなことに相応しいもクソもあるかってんだ!
早くトイレに行かないと、ここで尿を漏らしてしまう!
高校二年生にもなって、尿を漏らすのは恥ずかしすぎて黒歴史になる。この3人がどんな反応をするのかは分からないが……なんとなくだけど、『おしっこ漏らしちゃって赤ちゃんみたい。可愛い~!』とか言いそうで怖い。
「俺がトイレをしている姿を見て、何かメリットがあるのか?」
「「「ちんちんが見れるから」」」
…………マジで頭がおかしすぎるって!
俺のちんこを見ることがメリット!?
なにそれ、どういう意味だかさっぱり分からん!!
精神病院に入院して頭を冷やした方が絶対にいいと思うんだけど!
「俺のちんこがそんなに見たいのか?」
「「「うん!」」」
「だったら、見せてやるよ。トイレに行かせてくれたらな……」
すると、3人は瞬時に動いて俺から離れた。
今はこう言うしかない。じゃないと、トイレに行けずに尿を漏らしてしまうからな。尿を漏らすよりは幾分マシだ……ちんこを見せた方が。
俺はソファーから立ち上がると、早歩きでトイレへと向かった。
トイレの扉を開き、俺は便座に座って尿を出す。
「あっぶねぇー、マジで漏れるところだった……」
正直、ここから出たくない。だって、これからちんこを見せなくちゃいけないんだよ!? 嘘をついたと言っても、そんなことはお構いなしだと思うし……無理やりにでもズボンを脱がしてきそうだからな。
嫌だよぉ~、どうしてこんなことになるんだよぉ~!
つうか、今思ったが……どうして元カノの咲茉が、俺と復縁したいと思っているのかが気になる。俺たちの関係はそれなりに冷めて、お互いが会話をしなくなり……別れるときは、俺が咲茉に言ったんだ。
『別れよう。それが俺たちにとって一番の選択だ。今までありがとう』
その言葉を聞いた咲茉は頷いて……俺たちは別れた。
すると突然、トイレの扉をノックする音が聞こえた。
「お兄ちゃん、何してるの? 早く出てきてよ」
「大ちゃん、まさか……朝からオナニーしてるの!?」
「大輝が猿のようにオナニーしている姿……すっごく見たい!」
「何言ってんだよ、お前ら! んなことしてねぇよ!!」
トイレの扉を開けようとして、ガンガンと音が響き渡る。
「おい、扉が壊れるからやめろ!」
「だったら、早く出てきてよ。お兄ちゃん」
「分かったよ……」
めっちゃ嫌だなぁ……ちんこ見せるの。
俺はレバーを回してトイレの水を流し、扉の鍵を開けるのだった。
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