最初の町の商人、女の子のため努力する

友達の友達

話しがちげぇぞこの野郎!!

俺は漫画が大好きだ。暇な時は基本的に家で、ゴロゴロしながら、漫画を読んでいる。特に俺が好きなのはなろう系。なんの取り柄もない主人公が転生して、可愛い美女達と共にイチャラブしながら世界を救って行くと言う、夢のようなお話が代表的だ。はっきり言って俺もこれと言った特技などがなく、取り柄もない。そんな俺がもし転生したら…。そう想像するとニヤニヤが止まらない。でもそんな俺が珍しく外に出ていた。何故かって?それは今日が俺がよく読んでいる漫画の最新刊の発売日だからだ!タイトルは「何もかも普通の俺が異世界に着た途端、美女たちから求婚を迫られるんだが!?」。いかにも俺が好きそうな漫画。読み進めていくとやはり、俺好みの漫画だった。前巻では、これからこの漫画の代表的なヒロインである美女、メアリーとヤる直前で終わった。この漫画は紳士漫画でもある。異世界転生×紳士漫画。これ程至高なものはない。そして、今俺はその漫画を買うことができた。

「メアリーの…ムフフ…。楽しみだぜ…!」

この漫画の中の推しはメアリーだ。そして遂にメアリーのそのシーン…。大学生の俺は、久々に走りながら帰った。だが、その時だった。俺は信号を見ずに走って帰ったため…。


バコーーーーン!!!


車に勢いよく吹っ飛ばされた。


…あれ?ここは…?俺は目覚めた。おかしい。車に俺は轢かれたのだ。しかも結構な勢いで。良くて全身骨折だろう。

「あ!漫画は!?」

そう思い辺りを見回したが、漫画らしきものは、何処にもない。状況がよく飲み込めない俺は、一旦冷静になって自分がいる部屋を眺めた。何処かの家の一室だろうか。生活感を感じる。自分が今まで寝ていたベッドから起き上がり、ドアを開ける。すると、そこには武器が沢山並んでいた。と言っても全然強そうじゃない。木でできた剣や革でできた防具、木の杖などが並べられていた。俺はその武器たちに何故か見覚えがあった。そして、反対側には鉄のようなものでできたシャッター。外からはガヤガヤと言った賑やかな声が聞こえる。俺はシャッターに手をかけた。少し重いけれど、力を出してシャッターを開ける。段々と太陽の光が差し込んできた。

「よいっ…しょと!」

やっとのことでシャッターを開くと、そこには中世ヨーロッパのような景色が広がっていた。地面にはタイルが貼られており、鎧を着た人々が馬を連れて歩いている。その他にも人々がたくさんおり、各々が自由に暮らしていた。そして俺はその光景を見てそこが何処だか分かった。

「始まりの町…グラヴィアス…!」

そう。俺の読んでいた漫画「何もかも普通の俺が異世界に着た途端、(以下略)」に出てくる始まりの町、グラヴィアスの光景だった。漫画の主人公もグラヴィアスにある平民の家庭の青年に転生し、しばらくこの町で暮らすのだ。そして思い出す。ここにある武器たちは最初の町の商店で買える武器たちだ。だから大体が木や革でできており、脆く弱いのだ。

「まじか…!じゃぁ、あの交通事故をきっかけに「何もかも普通の俺が(以下略)」の世界に転生できたんだな!ならば、俺もあの主人公みたいに…。剣で魔物をぶったぎって、女の子たちと…。」

そう考えて俺は、鼻の下を伸ばしていた。死ぬのも悪くない。そう思っていたのだが…。

「ん?待てよ。「何もかも普通の俺が(以下略)」の主人公は確か…。平民…だったよな?でも俺は…商人じゃねぇか?」

そう。「何もかも普通の俺が(以下略)」では、先程と言った通り、主人公は平民の家庭に転生する。でも、商店を自分自身が構えている以上、自分は商人である可能性が高い。

「待てよ…。「何もかも普通の俺が(以下略)」の世界では…。商人の位が一番下だった…よな?え…。俺もしかして。主人公ポジには転生してない?」

「何もかも普通の俺が(以下略)」の世界では、商人が一番弱く、過去にある人物によって封印された魔王が復活してしまった時には、平民以上の階級の者の中から一人だけ選抜し、その選ばれた者が勇者となって、仲間を集め、色々な国に行き、魔王を倒すのだ。だが、平民以上の者がその抽選を受ける権利があり、平民未満である商人は、その権利冴えもない。つまり、俺は…。

「勇者に、なれないのかぁ!?!?」

その事実を知ってしまった俺は、その場でうずくまってしまった。

「おーい!ベト!」

その声は明らかに俺を呼んでいる。そうだ。グラヴィアスの商人の名は、ベト。ベト・ウィリアムズだ。つまり俺が、ベトってことか…。ベトのイメージは本当に無さすぎる。大したアイテムも売ってないし、かと言って重要なことも言わない。完全モブだ。第一巻の一話以降、多分出てきていない。俺は溜め息を一つつき、

「何でしょうか…。」

と言った。

「げっ!げっそりしてんじゃねぇかよ。大丈夫か?」

「大丈夫…です。」

大丈夫じゃないと言おうとしたが、説明するのが面倒臭そうなので、大丈夫と言うことにした。

「なら良いんだけどよ!そうそう。回復のポーションが欲しいんだよ。持ってる奴が切れそうで…。」

「うちのポーションそんなに回復力ないっすけど…。」

「商人がそんなこと言って良いのか?まぁ、そうなんだけどよ。でも、安いし、周辺の動物や魔物を狩るだけだから大丈夫よ。」

「あー…。そうすか…。10Gでーす…。」

「うい。ありがとなー!」

そう言うと客は帰っていった。

「あぁ…俺商人なんだ…。」

俺は膝から崩れ落ちる。顔を上げると、綺麗な色をした雲一つない澄んだ空。太陽が輝かしく、眩しい。

「おいぃぃぃ!!!神ぃぃぃぃぃ!!!話しがちげぇぞこの野郎ぅぅぅぅ!!!!!!!!」

俺は思わずそう叫んだ。

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