#3 ビデオ系女子の落とし方
見たら必ず死ぬと言われるビデオを手に入れた。リサイクルショップでビデオデッキとブラウン管テレビを購入して配送して貰った。
色々接続を済ませて無事に稼働できる事を確認した後、早速ビデオを入れて再生した。画質は荒かったが、鬱蒼と生えている森林の中に孤独に置かれた井戸があった。一瞬何も起きないのかとガッカリしたが、わずかに手が見えていた。
そこからゆっくりと顔まで髪で覆われた生気のない女性が姿を現した。僕は『来たっ!』と内心喜んで急いで棚からお菓子を取り出した。
封を開けているうちに、髪長の女性はもうすぐ側まで迫っていた。これは確実に飛び出るなと思った瞬間、案の定画面から長髪が出てきた。
頭まで出てきたと分かった瞬間、僕は自分の口にポッキーを咥えて待機した。髪長の女性は床に倒れ起き上がった時、僕とちょうど顔の位置が同じになった。
掴みかかろうとしていたが、チョコレートの甘い香りがしたのだろう。手が止まっていた。
「ポッキーゲームしません? 僕とあなたがこの一本を端っこから咥えて食べ続けるんです。で、どこまで食べられるかという度胸だめしです」
僕はそう説明すると、髪長の女性は考えている様子だった。まだ身体の半分も出ていない状態でこのような誘いを受けた事がなかったのか、ジッと目の前にあるポッキーを見ていた。
そして、ゆっくりと咥えた。どうやら参加してくれるみたいだ。僕は少しずつかじった。けど、髪長の女性は一切動かなかった。いや、本当は数ミリかじっているかもしれないが、兎にも角にも僕の方が先に着いてしまった。
髪長の女性の唇に触れた瞬間、鬱蒼としていた前髪から瞳らしきものが見えたかと思うと、慌てた様子で引き返していった。
画面の奥にある井戸の中に落ちるように降りたきり、戻ってくる事はなかった。意外に乙女なんだなと思い、そのままにして置くことにした。
ポッキーをその前に置くと、時々彼女が顔を出して咥えて待機しているので、そういう時は必ずやるようにしている。
だけど、絶対に僕が先についてキスをすることになるんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます