#2 口裂け系女子の落とし方
最近、口裂け女が下校途中の子供達に自分が綺麗かどうかを聞いているという情報を得た。その周辺をブラブラ探していると、背後から「ねぇ」と声をかけてきた。
背中が寒くなってきたので本命が来たと内心ガッツポーズした僕はゆっくり振り返ると、真っ赤なコートを着た長髪の女性が立っていた。予想通りマスクもしている。
「私、きれ……」
「早くマスクを外して素顔を見せてください」
口裂け女は催促された事が初めてなのか、「あ、うん。えっと、待って」と予定していた段取りを飛ばしてマスクを外してくれた。
案の定、口が裂けていた。普通だったらこのあと襲い掛かってくるが、そうなる前に「もっとよく見たいのでしゃがんでください」と要求した。
口裂け女は首を傾げながらも言われた通りに膝立ちになった。僕は「口を大きく開けてください」と言うと、渋々やってくれた。
「では、これより虫歯の検査を始めます」
僕はカバンからデンタルミラーを取り出して、口裂け女の歯の状態を確かめる事にした。レントゲンや絵ではなく自分の眼で奥歯が生えている様子を見たいと思っていた僕は噂を聞いた時から楽しみでしょうがなかった。
口裂け女は僕を突き放そうとしたが、「歯並び綺麗ですね〜!」と褒めると大人しくなった。
「えーと、これは凄い。虫歯が一個もない……あ、親知らずが生えていますね」
僕がそう指摘すると、口裂け女は立ち上がって「変態っ!」と頬をぶって出ていってしまった。
さすがに初対面でやり過ぎたかなと思ったが、後日口裂け女が子供から歯科医に狙いを変えたという噂を聞いて一安心した。
どうやら気にしていたみたいだ。
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