1、愛しのチャップ様

第1話

私は今年社会に出たばかりの新入社員。


会社はキッチン用品から電化製品までの分野で名の知れた大手企業から枝分かれされた子会社にあたる。


ペットフードやトイレ用品やハーネス等々を専門とする会社だ。


元が大きい会社だけに子会社でも大規模で社員数も数百人にもなる。


私がこの会社に希望した理由は職務内容の待遇がいいのと、何よりペット好きにはたまらない嬉しい特典もあるからだ。




数ヶ月の新人研修を終えて初めに配属されたのは営業部だった。

いきなりこんなガチンコ勝負な部署?と当たり前のように動揺してしまう。


こういうのはもう少し世渡りが上手な人が配属されるものじゃないのか?


そんな愚痴を同期にこぼしたら思わぬ言葉がかえってきた。



「角谷さんは容姿がいいから当然かも。私は経理よ~。よっぽど会社の顔にしたくないのね」



共に新人研修で仲良くなったと思っていた千明に言われ悲しくなった。


自分ではそんなに容姿がいいとは思っていない。


限りなく普通・・・というか可もなく不可もなく?だと思う。



そもそも、私を会社の顔にしたいのなら受付嬢とかにするでしょうに。


経理に配属されたのだって、相応しい資格を彼女が持っていたからだろうに。

言ってしまえば接待だって残業だってダントツになく、私にすれば理想的な職場となりそうなのに。


「そんなことないよ」


いろいろ思うところはあっても、出てくる言葉はこの程度。


嫌な顔一つせずに本音は心に隠したまま。


私は我慢気質なのかも知れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る