第30話

ワザとらしいとか色々言ってたけど、適当にごまかした。


バイトを募集しているって情報は最近話せるようになった長篠潤さんから聞いた。


先輩の村にある唯一の商店”長篠商店”

規模は小さいけれど、小さなスーパーのような店である程度のものは揃っている。


電話一本で即日に配達対応していることもあって、近隣の集落からも信用もあり皆に長年頼りにされている親子で経営をしているお店。

潤さんはそこの一人息子さんだ。


「美優の父親、修二さんっていうんだけどよ、ここらのドンだから」

「ドン?」

「一番腕の漁師でここらを仕切ってる。まあそんなこともあって一部のモンは厄介にしてっけどよぉ、―――んでも悪い人じゃないから」

「厄介?―――とは、どういう意味ですか?」

「ハハッ!顔はチョー怖えけど、いい人ではある」

「ではあるって、悪い人の面もあるってことですよね?」

「まあ、所見はビビるわな、まあ、頑張れば。」


奴といい、潤さんといい・・・



どうしてこうも人をビビらすんだか。

ここの風習か?土地柄そういう風におちょくるのが楽しいのか?


ジンだの修二さんだの。

そんなの、どうにかこうにかうまく付き合うなり戦うしか道はないだろう?


それが先輩の傍にいるということなら、なにも恐れるものはない。



「あ、タケさ、6月の第三週の日曜日暇?」

「六月って、昆布のバイト始まってますけど・・」

「夜手伝ってほしいんだよね、美優が今年は手伝えねぇとかふざけたことも言ってるから、連れてきてくんね?親父たちが仲間とジャズフェスやるんだわ、その設営とか手伝って欲しいんだわ、昆布の出漁なかったら昼間も頼む。日曜ならよう、美優休みだから、バイクで引きずってこいや、頼むぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る