恋敵
第14話
数日後の昼休み
女子の声がきゃきゃーうるさい。
一緒に飯食ってた塚本も眉を顰め声の発信源になっている視線の先を追った。
「また工藤先輩か」
名前を聞いただけで嫌悪感が増す。
「また中庭でバスケしてんだわ。好きなら部活入ればいいのに」
「・・・部活に入るまで好きじゃねーんだろ」
軽音部もすぐ投げ出したような男だ。
とても根性があるとは思えない。
弱小ながらも練習は走りっぱなしでキツイだろうし。
窓際に立ってる塚本の横に立って工藤を見下ろした。
相手の呼吸を読み、俊敏に合間をぬって先へと進む。
その先にはゴールなんてないけど、あたかもあるかのようにボールを放っている。
どんなルールがあって点が入っていくかは分からないけど、本人たちは楽しそうにプレイしていた。
運動神経はいい方だと思うし動きもいいけど・・・・何もかもが滅茶苦茶だ。
ショートの態勢がなっていないし、力任せに飛ばしているように見える。。
全体的に注目を集めるだけのパフォーマンスに過ぎない。
もう大分ボールには触っていない。
授業でやる時もあまり触れないようにしていた。
いま興味のない物で注目が集まっても仕方がないし。
でも、不思議なものでさ、もうやらないって決めつけてるのに、下手な奴を見るたびに”下手くそ、俺だったらこうするのに”って気持ちがわいてくるんだよな。
「あ、斎藤先輩だ」
「え、どこ?」
塚本が指さしたのは奴らがいる中庭から少し離れた渡り廊下の窓際。
先輩は無邪気に遊んでいる工藤翔を目で追っていた。
直接その輪に行くこともなく、声をかけることもなく、少し離れた場所からどこか悲しそうな表情で奴のことだけを見続けていたんだ。
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