第12話

このまま笑われるのも癪だし、話題を変えよう。


「――――腹減ったんで、なんか食いません?」

「そうだね、私もすいたかも。送ってもらったし、なんか奢るよ」

「だから、女性にそんなことはさせませんって」

「またぁ、そんな訳にはいかないよ、一応先輩になるわけだし、更に言えばドラムを一から教えた師匠みたいなものだから私が奢るって」


「だから、自分は—――」

「自分は—――だって。タケって時々言葉遣いがおかしいよね。――――あ」


またケタケタと笑ってた先輩が何かを見つけて黙った。

その視線を何となく追うと奴の姿があった。


さっき工藤を探していた安西やいつもの取り巻きたちも一緒だった。


その中には他校の女も交じっていて、一人の女は嬉しそうに奴の腕にしがみつくように歩いてる。


嫌そうに振りはらう仕草はしてるけど、その女はそこそこ美人の部類にはいるし、まんざらでも無いんだろう。

しかも周りに冷やかされて大口あけて笑ってるし。



「・・・・・・」


先輩、さっきまで笑ってたくせに一気に気分が落ちたんだな。


彼女の気持ちを動かすのはいつだってあいつだけ。


俺の行動なんて彼女の気持ちを少しだって動かせない。



「何食べようかな~。期間限定のスイーツが先週からでてるんだよ、それにしようかな~」



好きな奴のあんなところ見てさ、ショックを受けてるくせに、弱みさえ見せてくれない。


普段はふざけて泣きついたりする癖に、先輩の仮面は絶対に剥がさないんだ。

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