第11話

俺が斎藤先輩にだけ定例会の延期を知らせなかったのはこの状況を作るため。


家は目の前にあるんだから自転車なんて必要ないけど、先輩が暮らしてる地域は市外にあたるからこういった事が起こるんだって分かってから自転車で登校するようにしていた。



「じゃあどっちが漕ぐか決めないとね。いっくよ~、じゃーんけーん―――」


「俺が漕ぎます」


「ぽーんって、ええ?いいの?」


「こういう時は普通男でしょ?おれ、細いから軽そうに見えるかもですけど、背があるんで結構重いんすよ?」


「えー確かにそうだけどさ~、地元の男らはそんな事してくれないよ~。へーきで漕がせられるし」


地元の男らの中には工藤翔も入っている。

斎藤先輩と奴は同じ村で育った幼馴染ってやつだ。


「早く座って下さいよ。行きますよ?」


「はいは~い、お願いします。でも疲れたら変わるから言ってね?」


「――――俺は女性にそんなことはさせませんって」



きっぱりと言ってやったのに「女性だって」とか言いながら後ろでぷぷぷと笑ってる。


ほんと、腹立つ。

俺がどんな想いでこのシチュエーションを作ってうかれてるのかを知らないんだろうな。

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