第8話

「もう、タケ、聞いてるの?ボーっとしてるけど」

「――――人間味あふれる表情してる余裕なんてないです」

「もうそこから違うから、余裕があるから演技してるみたいにわないで。ギターは顔で弾くって言うでしょ?ドラムも感情のっけて叩くの」


「はあ・・・・」


また訳わかんないことを。

だいたい、顔=表情ってことを俺が知ってる前提になってるし。


「ちょっと訳わかんないって顔してるよ、バカにしてるでしょう?」


「―――言いがかりですね、していませんから」


「うっそだ、小首傾げてるもん。いい?ちゃんと感情のっけて叩くって、分かりやすい例え話あるから。ん~~、例えばぁ、夏の暑い日のビールとかさ、ぷっは―ってなるでしょ?無表情で真夏のビールをのむ人なんて居ないでしょ?」


「――――テレビでは見た事ありますけど…。実際やったことあるんですか?」


「いや、ないけどさ・・でも!あるでしょ?そういうの、わっかんないかな~?刑務所に入ってたヤーさんはさ、久々のジャバにでて最初に吸う煙草とか、ぷっは~ってなるでしょ?」


「―――まだどちらも経験ないんで、分かりかねます」


「もう~!冷静な返しだなぁ!せめて少しだけでもいいから笑ってよー!それかツッコんだりノッたりさ~。色々あるでしょ?」


・・・・笑って欲しかったんだ?


いやいや、そんな持ってきかたがレア過ぎんだろ。

そもそも、俺はそんなボケたりツッコんだりするキャラじゃないし。


でも・・・怒ってる先輩も可愛い。

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