第4話

母親の姉が昔から俺によくしてくれていたんだ。


叔母からすれば兄弟の扱いについて、差があることがすぐに分かっていたらしい。



ある時から俺の表情が乏しくなっていったことも気にかけてくれていた。



その唯一の理解者でもあった叔母に今の家に一人で残りたい事。


学校は目の前にある一番近い高校に通いたいことを相談したら、おれの希望を叶えるために裏で色々と手をひいてくれた。


引っ越しや一花の転校手続きなどで両親が忙しそうにしていたから、叔母が俺の進学手続きの手伝いをすると申し出てくれた。


両親は俺以外のことで忙しいこともあってか叔母にまかせっきりになった。



あとは予想通りにことは進んだ。


親父だけ先に単身で行って生活基盤が出来た初夏あたりにおふくろと妹もこの街から出ていった。



俺がだいぶ前に朝日実業の誘いを断っていたことを両親が知ったのはその年の夏ごろだった。


相当腹をたてたのかとち狂った電話が何度も来てたけど全部スルーした。


数週間たって諦めたのか両親からの連絡は少なくなり、秋に入るくらいには放置に近い扱いだった。



唯一親らしく学費や生活費は入れてくれたから金に困ることはなかったから、そこは感謝している。


まあこれも、人の目を気にした最低限の務めだとは思っているけどね。


数年後に戻ってくる予定はあるから、近所の人達に俺が金に困る姿を晒す訳にはいかなかったんだろう。

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