【続・続】のっぺらぼうの、お正月!

崔 梨遙(再)

1話完結:1500字

「縁(えにし)も、いよいよ幼稚園やなぁ」

「そうね、時の経つのが早いわね」

「ということは、固定した顔が必要だね」

「そうね、ごめんね。私がのっぺらぼうだから、遺伝で息子に顔が無くて」

「そんなん、たいしたことではないよ」 


 男は京本暇太(きょうも と ひまだ)、40代のサラリーマン。女性は紡(つむぎ)、のっぺらぼう。2人は夫婦だ。いろいろあって結婚、そして子宝にも恵まれた。子供は縁と名付けられてかわいがられて育った。しかし、縁ものっぺらぼう。決まった顔が無い。幼稚園に入園するということで、縁には固定する顔が必要だった。


 まだお正月なので時間はあるが、どんな顔にするか? 早く決めて安心したい。雑煮とおせち料理(紡の手作り)を食べてから、暇太は縁に話しかけた。


「縁、4月には幼稚園だ。お前の顔を決めなければならない。どんな顔がいい? 好きな顔はあるか?」


 縁は顔を手で覆った。そして顔から手をはなすと縁の顔に1つの顔が作られていた。


「おお、大御所の俳優さんの顔やな。って、老けすぎてるやろ! お前は幼稚園児なんや。オッサンの顔で幼稚園には行かれへんわ。他の顔になってみろ」

「おお、国民的女性アイドルの顔やないか。って、お前は男の子やろ! しかも、それ19歳くらいの顔や。やり直し!」

「おお、イケメン俳優か? だ・か・ら、老け過ぎやって言ってるやろ?」

「おお、今度は大御所女優か? お前は何回同じことを繰り返すねん?」

「おお、子役の顔か? 惜しい! 有名過ぎる! でも、そんな感じや。もう1回」

「おお、別の子役の顔か? だ・か・ら、子役と同じ過ぎる顔やったらアカンねん」

「おいおい、またアイドルか? それ、お前が好きなだけやないか。しかもそのアイドルは16歳や」

「お父さん、難しいよ」

「あなた、縁は子供の顔をあまり知らないわよ。テレビばかり見てるし、まだ外で友達と遊んでないから」

「顔が決まらないと、外で友達と遊ばされへんやんか。顔を決めるのが先やろ?」

「じゃあ、ネットでその年頃の男の顔を検索しましょうよ」

「いいけど、のっぺらぼうがネット検索する時代になったのか……」

「あなたよりも携帯を使いこなしてるからね。ふふふ」

「ええねん、僕はパソコンで作業をするから」

「それより、画像検索しましょうよ」

「お、これええなぁ、子役でも有名じゃないから真似しやすい。おい、縁、この中からお前の顔を決めろよ。気に入った顔があったら言え」

「この顔、気に入った」

「どれや? その顔になってみろ」

「これでどう?」

「おお、4歳くらいの……女の子やないか! お前、好きな顔って、そういう意味とちゃうねん。誰もお前の好きなタイプの女の子のことは聞いてないから」

「イケメンになりたい」

「アカン、4歳やったらかわいらしい顔の方がええねん。大人になった時にイケメンに成長してたらええんやから」

「お父さん、難しいよ」

「紡、バトンタッチや。後は任せた」

「はいはい、任せてちょうだい」


「あなたー! 出来たわよ-!」

「おお! かわいい男の子やないか。これで決まりやな」

「僕、これからこの顔で生活するよ」

「そうそう、今の顔を忘れたらアカンで」

「売れていない子役の画像からとったの」

「紡、よくやった。さすが紡や!」

「こんなカワイイ子なら、私達もかわいがりやすいでしょう?」

「そうやな、一般人として生きて行くにはこれで充分ええなぁ。縁には、普通の家庭で普通の暮らしをしてほしいからなぁ。縁、お前は一般人として普通の人生を生きていくんやで。普通が1番や!」



 数日後、縁は公園で芸能プロダクションから子役としてスカウトされた。かわい過ぎる子供は、普通ではいられないらしい。







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【続・続】のっぺらぼうの、お正月! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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