第三十話『天道教の幹部達』
「で?話ってなんだよ。」
「…天道教の素性が少し分かったので、戦友であるあなたに共有しておこうかと。」
「ちょっと待て、俺達、戦友だったのか?」
「あら、違いましたの?あんなに激しく剣を交えた仲じゃないですか。」
「…まぁ否定はしねえけど。」
「話を戻しますわ、天道教の7人の戦士がいると、以前お話しましたが、その7人、いわゆる幹部達には、2つ名が付けられているらしいのです。ベンケイなら、"鉄壁のベンケイ" と呼ばれているそうですわ。」
「…ちょっと待て、お前、その情報、どこで手に入れた?」
「いや、昨日の夜に少し散歩をしていたら──」
「──ふう、肌寒いですわね。…ん?」
「うー、ヒック。」
「おいおい、飲み過ぎだろ。」
「うるせえうるせえ、俺は天道教の人間なんだぞぉ?この間だってなぁ?あの鉄壁のベンケイさんに褒められてんだからなぁ?」
「あんま大きな声出すなって、誰かに聞かれたらどーすんだよ。」
「細けえことは気にすんなってぇ。」
「──酔っぱらい?でもこの話が本当なら、有益な情報になるかもしれませんわ。」
「───と、彼らを尾行したら、様々な情報が出てきたので、念の為に、と。」
「ちょっと待て!!お前なぁ!女の子が一人夜出歩いて尚且つ尾行したらあぶねえだろ!見つかったらどうすんだよ!!」
「……私を。"女の子" として見てるんですの?」
「え?当然だろ、だって女だし。」
「……話をまた戻しますわ。」
少し照れている気がした。
でも突っ込むより先に、情報が気になってしまった。
「天道教の幹部たちは、ベンケイの他に6人います。全ての人を把握は出来ませんでしたが、2人は名前を知ることが出来ましたわ。"閃光のコウメイ" と "神殺し" と呼ばれている二人。」
「か、神殺し??怖ぇ……。」
「どちらも名前しか知ることは出来ませんでしたが、結構な収穫でした。あ、あと、神殺しはベンケイより強いと言っていましたわ。」
「マジか…。あれより強えのか。」
「取り敢えずこの情報は、団長様に伝えておきますわ。」
「あぁ、そうだな……。」
頭の中では、あの日の惨劇が思い浮かんでいた。
今、愛菜の様子はどうだろうか。
ベンケイの話を聞く度に、脳裏にちらつく。
「───愛菜ちゃんの事を考えてるんですの?」
完全に見抜かれていた。
「…あぁ、心配でな。」
「そうですわね。…あ、そういえば。VINE交換しませんか?これからのために。」
「あ、おう。そうだな。」
「ありがとうございます。…あと、お気をつけ下さい。最近、天道教の活動が活発化しています。愛菜さんの件もありますが、貴方もあまり目立った行動しないように。」
「…ああ。分かった。わざわざありがとな。」
「いえ、お気になさらず。では、私はこの辺で、」
彼女がトレーニング室を後にした。
何故だか急に、愛菜の様子が気になった。
「────あ、師匠。」
「おお、深海か。どうじゃった?」
「第三次試験、無事通過しました。」
「おお!良かった良かった。」「──ええ!?深海、無事に通過したんデスか!!」
「この声は、美咲か?」
「あぁ、今ちょうど遊びに来ててな。お主のタイミングがバッチリだったという訳じゃ。」
「master、電話変わってクダサイ。oh!深海!無事に合格したんデスね!!」
「まぁ、なんとかな。美咲との訓練がなかったら無理だったよ。ありがとう。」
「いえいえ、気にしないでください。私すごく今嬉しいんデス。」
「それで、美咲。愛菜の様子はどうだ?」
「あー、この小娘なら、"今日の朝、目を覚ましましたよ。" 」
「…!?本当か!!?」
「あぁ、でも。一度目を覚まして、なにか言い残してすぐにまた、コケって倒れて今も寝てしまっています。言い残した言葉は、よく聞こえなかったので共有することは出来ませんが。」
「…なんだそれ、愛菜は無事なのか…?」
「呼吸や脈に異常はありませんので大丈夫だとは思うのデスが。」
「…そうか、取り乱して悪かった。それと、師匠に伝えておいてくれ。明後日帰るってな。」
「承知しましたのデス!では明後日会えることを楽しみにしているのデス!」
「おう、ありがとう。」
電話が切れた。
愛菜の事は、ひとまず安心した。
ここで情報を整理しよう。
まず、俺と翔也と琴葉は明日の最終試験は免除でフリータイム、何しようか迷うな。
そして琴葉から教えてもらった天道教の素性。
7人の幹部達の存在、そしてその幹部たちには2つ名があること、ベンケイは"鉄壁"
新しくふたりの幹部の名前。
"閃光のコウメイ" "神殺し"
神殺しに関しては、恐らく2つ名だけ流通しているんだろう。
そしてその上には、皆が崇める宗教の神様。言ったら天道教のラスボスが居ること。
今まで中々素性を見せなかった天道教の連中たちが、徐々に素性を見せるようになった。
これは運命の導きかもしれない。
俺たちを未来に送ったあの人物の本当の招待、何故俺たちだったのか。
全て明らかになるまでは、この未来の世界で生き抜かなきゃいけない。
「──まぁ、オレのやることは変わらねえな。討伐士で実績を積んで、天道教と香良洲、両方ぶっ飛ばして、真相を突き止める。」
決意が更に固まった。
体を動かしたくなり、少し筋トレをして部屋に戻った。
「──あ、深海。お疲れ。」
「……お、おう。」
部屋に戻ると、完膚なきまでにボコボコにされてる翔也とニコニコ笑ってる伊織が居た。
一瞬見た時、殺人現場かと勘違いしてしまうほど。
「どこ行ってたのさ、心配したんだよ?」
「悪いな、少し話があって。……翔也、生きてるよな?これ。」
「うん!生きてるよ?少し息がしずらいみたいだけどね♡」
「これは本格的にやばいな、おい翔也、生きてるか!」
「───あ"、が。し、んかい…。今まで、ありがと…な。」
「おいおい洒落になんねえぞ、今すぐ救急車を!!!」
「───はははっ、…なんだよ、救急車って、昔の……人かよ……、」バタッ
「翔也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「うるさぁぁぁぁぁぁい!!!」
「あ、すいやせん。」
治癒術士の人が怒鳴りにきた。当然だ。
この茶番を始めたのは俺らなのだから。
そして翔也はすぐに回復した。
「ふう、危なかったぜ。あんなの拷問だよ拷問。」
「伊織も手加減しろよな。」
「手加減って、なに?あはは。」
「こいつ完全に頭いってやがるぜ」
「あ"?」
「煽るなお前も!ったく。お前らなぁ。仲良いのか悪いのか、分かんなくなってきたぜ。」
そんな会話をしながら、気が付けば寝落ちしていた。
目が覚めると、気持ちのいい空気と朝日が俺達に朝を知らせてくれた。
伊織は最終試験に行き、俺達は二度寝した。
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