第二十八話『第三次試験』
次の日の朝になった。
残っている30人が招集された。
「皆さん集まりましたね。では、これから最終の第三次試験を開始します。」
「今回の第三次試験で残った10人の方、めでたく討伐士に任命され、将来が約束されますので、最後まで頑張ってくださいね。」
「やってやるぜ。」「負けられねえ」「ここまで来たんだ、」
色んな声が聞こえた。
無論、俺も負けるつもりはサラサラない。
「では、第三次試験のルールをご説明致します。」
「第三次試験では、Aグループ15人とBグループ15人に分かれてもらい、1チーム5人まで残ってもらいます。そして肝心の試験内容はズバリ、『戦闘型ロボット』との戦闘!」
「戦闘型ロボット…?」
「戦闘型ロボットは名の通り、戦闘用に開発されたロボットです。見た目はヒトの形そっくりですが、中身は高度なAIと鉄の身体で作られた機械。その戦闘型ロボットと戦ってもらいます。」
「なるほど、というか、その戦闘型ロボットはどんくらい強いんだ?」
「戦闘用ロボットは、常に相手の手を分析し、先読みして攻撃を当てる最新のAIが搭載されているので、強さは計り知れないと思います。正直、顔面をボッコボコにされてもおかしくありません。ヒトの形をしているだけで、人の心は持ち合わせていないので。」
「でも安心してください、ちゃんと抑制装置を付けますので、実力は落ちます。とは言っても、討伐士中堅クラスの実力はあると思いますが。」
「十分強ぇじゃねえか…。」
「ワクワクしてきたぜ、なぁ小柳。」
「おう、武者震いがするくらいにな。」
「え、ウチには何も言わんの?」
「お前は頑張れ」
「お前は頑張れ」
「ロボットより先にお前らを殴り飛ばすぞコラ。」
「では早速、チーム分けを行います。」
────で、なんでウチだけ別チーム!?
俺と翔也は同じチームになったが、
何故か伊織だけ別チームだった。
「日頃の行いじゃねーのー!?頑張れよ、御嶽山のいおりちゃーん。」
「おいおい、流石にバカにしすぎだろ。」
「アイツダケハコロス───」
「ほら、伊織が殺戮ロボットみたいにカタコトになってるから!戦闘用ロボットより殺気でちゃってるから!」
「伊織のためにやってんのさ、俺は。あんだけキレたら、戦闘用ロボットだろうがなんだろうが、余裕で倒せるだろ?」
「お前……後で何されてもオレは知らないからな。」
後先考えず行動するところが翔也らしい。
そう思って待っていると、ロボットが歩いてきた。
その身なりは、ベンケイを思い出すほどの巨体で、4本の腕があり全ての手に木刀があった。
「おいおい、思ったより強そうじゃねえか。」
「身なりから本気出してんな。これ、オレだけ人間超えてるレベルのやつ当てられてるとか??」
先程の説明と違い、明らかに人間離れしている。
他のグループのロボットを見ると、ヒトに近い体をしているのに。自分だけ違うように見えた。
「まぁ、やるしかねえよな。」
「あぁ、小柳。絶対残って、討伐士になろうな!」
「おう、負けんじゃねえぞ。」
友達とグータッチを交わした。
そして、試験は一斉にスタートする。
───では、始め!!
と同時に、ロボットが動き出した。
第二次試験同様、戦闘不能になるか、続行不能だと判断された場合脱落になる。
ロボットを仮に破壊できた場合、問答無用で合格になるらしい。だが、そんな人間は今まで一人もいなかったという。
「こりゃ、耐久戦って訳だな。最後まで生き残れば、って感じだろう。だとしたら、ここで体力を残しておかないと、きついな。」
翔也は冷静に分析していた。
アイツの態度は小うるさいし馬鹿だが、戦闘面に関しては天才クラスだと思う。
頭と一緒に体もついてくるから、明らかに強い。
それに比べ伊織は────
「アイツ…だけはっ、絶対!コロス!」
もはや気合いで押し通してる感じだ。
相手の攻撃を木刀で押し返し、完全に力技とも言える戦闘スタイルだ。
体力は減ってく一方だろうな。
「戦闘型ロボットにも色んな種類があるんたな、オレの相手は体でかい代わりにスピードは遅いタイプだな。」
だが、一撃貰ったらやばい。
そう思えるほどのパワーがある。
でも、速さだけでいえば、美咲や琴葉の方が数倍早かった。
戦ってるうちに、何人も脱落者が出てきた。
時間が経過する度、体力が減ってくる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
─────ほう、面白いな。
高みの見物と言わんばかりに上から観戦する団長率いる第一位と第二位。
「お父様、お父様がここまでご覧になるのも、珍しいですね。それほど、彼に興味が湧きましたか?」
「そうだな。彼は人には無い力を持っている。それが発揮されるのは今すぐじゃないかもしれないが、それが楽しみでな。」
「僕も同じ意見です。団長殿。彼を最初助けた時から、同じ匂いをしてましたし。彼は強くなりますよ。」
「そうだな。我々東商討伐士団の名誉のためにも、必ず若者を成長させなければならない。無論、君たちも同じだ。蓮、竜馬。」
「もちろんです。団長殿。」
「仰せのままに、お父様。」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
何分が経過しただろう。
今の時点で脱落者は10人。残り10人脱落でこの試験は終わる。
その時だった。
「雷鳴轟く遥か先、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、イカヅチ轟く音響き、我が力となりて顕現せよ。─────神撃斬。」
琴葉が呪文を唱えだした。
ニュアンス的には、蓮が使っていた治癒術の前振りに似ている。
唱え終わった瞬間、琴葉の木刀が輝いた。
そして、戦闘型ロボットの首を跳ねた。
その瞬間ロボットは崩れ落ち、壊れた。
それを見た観客と上の人達は驚いた。
今まで壊れなかった戦闘型ロボットを壊したのだ。
いつも以上に彼女が凛々しく、かっこよく見えた。
「────マジかよ、」
「すっげぇ……。」
「第一位通過!!圧倒的実力!!川崎琴葉!!!」
「お先に失礼しますわ。」
アナウンスが聞こえた。
合格者数が残り9人となった。
緊張感が走る。
「───俺も、やらねぇと。」
段々とAIが自分の太刀筋を学習してきている。
不意打ちで何発かダメージを与えられる事も多くなってきて、体力的にも限界だった。
「くそ、ここまでやってもケロッとしてやがるのがロボットの嫌なところだぜ。」
ふっと翔也の方を見ると、かなり押されていて出血もある。
俺よりも過酷な状況だ。
今この場には12人、合格者数残りは9人。残り3人が脱落すれば合格できる。
「────ぐはっ…!!」
翔也の声がした。
見ると、仰向けに倒れる翔也の姿があった。
恐らく一撃重いのを貰って倒れたんだろう。
でもロボットは、それでも待ってくれない。
「──ボコボコにされてしまうかもしれません。」
最初に説明していた声を思い出した。
このままだと、友達がやられてしまう。
そう思ったら、勝手に体が動いた。
───もう、ダメか。悪ぃな、こやなぎ…。
出血も多い、意識も朦朧としてる。
もう、ここで終わっていいんじゃないか。
そう思った時、友の背中が見えた。
「────諦めてんじゃねぇ!!!!」
はっと我に返った。
目の前には小柳がいた。
俺を庇うように、ロボットの木刀を防いでいた。
「こや、なぎ……?」
「忘れたのか!!昨日の夜、温泉で一緒に合格しようって!!お互い乗り越えようって!!約束しただろ!!そんな傷ごときで、そんな攻撃ごときで、負けてんじゃねぇ!!!お前はまだ戦える!!」
「お前の覚悟はそんなもんだったのか!!そんな一撃で負けちまうような男なのか!!俺はそんな男のために、今こうやって命をかけてんのかよ!!!立て!桜木翔也!!!お前は、討伐士になるんだろ!!!!」
そうだ、何諦めようとしてんだ。
馬鹿か俺は、ここまでやってきただろ。
昨日負けたってクヨクヨしてる友達を励ましたはずなのに、今度は励まされた。
なぜだか、ちょっぴり悔しい気持ちになった。
「───悪ぃ、小柳、いや。深海。」
「気にすんな。翔也、まだいけるだろ。」
「おう、俺を誰だと思ってんだよ。第一次試験第一位、桜木翔也だ馬鹿野郎!!!」
「悪かったな、心配かけちまってよ、もう大丈夫だ。これからは、俺ら二人でいくぞ。」
「あぁ!それでこそオレの友だ。力を尽くして、ここを乗り越えるぞ!」
「おいおい!あれアリなのかよ!!」
一人の人が抗議した。
「ルール上では友達とタッグを組んじゃいけないなんてルールはありません。生き残ればクリアなので。それに別チームならともかく同じチームでペアを組むとは、いい手じゃありませんか。」
「───やはり、面白い男だ。小柳深海。」
団長が呟いた。
「これで、2vs2だな。」
「怖いか?深海。」
「ふっ、逆だ。お前がいれば安心する。」
「…ったく、何言ってんだか。この状況、ロボット2人対俺ら2人、最っ高のドラマだぜ!!」
「そうだな。じゃあ、背中は預けるぜ。"親友"」
「ああ、大舟に乗ったつもりでいろ、"親友"」
そう言い、2人でロボットに立ち向かった。
4本ある腕も、同じく4本で対抗しちまえばいい。
先に巨体ロボットに大きい一撃を与え倒し、その隙にもう1人のロボットを倒す。
その繰り返し。壊すなんて考えなくていい。
ただ俺たちは生き残ればいい。
「でも、あの姉ちゃんがこのロボットぶっ壊せたんだし、俺らに出来ねえことなんてねえよな??」
「翔也…お前、まさか。」
「一か八か、ぶっ壊してみようぜ。俺とお前なら出来るって思っちまってよ。」
「───やってみる価値はありそうだな。」
俺たちは、出会ってたった3日しか経ってないかもしれない。
でも、そこには切り離せない絆がある。
友情という名の絆が紡ぐ力は、絶大だ。
そうして俺と翔也は、構えた。
ロボットの動きに合わせて、今まで見せなかった "首へのカウンター斬り" を決めるために。
「行くぜ!!!」
「オレ達の絆の力が込められた一撃!!」
「喰らいやがれぇぇぇぇ!!!!!」
「喰らいやがれぇぇぇぇ!!!!!」
──鉄が落ちた音がした。
正確には、デカイ鉄が後ろに仰け反り倒れた音がした。
────俺たちは、ぶっ壊せた。
「な、ななななんとおぉ!!!!あの戦闘型ロボットをはたまたぶっ壊した、小柳深海!そして桜木翔也!!2人とも第二位、第三位通過!!おめでとう!!そして感動をありがとう!!」
アナウンスの声がうるさかった。
実況解説でもいるのかと錯覚するほど熱量がこもっていた。
「やったな、親友。」
「終わったな。親友。」
───俺達は、勝利した。
この試験に、最後の難敵に。
勝利した瞬間、気持ちよかった。
今まで壊せなかったロボットを壊せたこともそうだけど、何より、友と一緒に撃破出来たことが、1番嬉しく、気持ちよかった。
──親友同士、最後に優しくハイタッチをした。
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