第二十七話『揺るぎない友情』
──今まで俺と愛菜に起こっている全てを話した。
「なるほど、弁慶ね。その弁慶のせいで愛菜ちゃんは今昏睡状態に陥ってると。」
「あぁ、俺は弁慶が許せねぇ。アイツにやり返すためにも、ここで討伐士になって、強くならなきゃいけないんだ。」
「そこに関しては同情しますわ。…あ、そういえば私も弁慶が所属している天道教に心当たりがありますの。」
「知ってるのか?」
「ええ、この世界に長く居るので、大体のことは分かりますわ。"信仰宗教 天道教" は、とても数が多い信者を持つ宗教団体で、その中でも卓越した力を持つ7人の戦士が居るらしいのですが、私もその内部までは把握出来てませんの。でもその弁慶という男、その7人のうちの1人で間違いないですわ。」
「やっぱりそうか…、オレに勝ったお前に、一個聞きたいことがある。オレは、どうしたらもっと強くなれる。」
「仮にもまた戦うかもしれない相手なのに、よくそんな事聞けますわね。……そうですわね、ではひとつだけアドバイスしますわ。」
「あなたの剣術はおそらく、伝統派の構え、流儀だと思いますが。その流儀を使うなら、力に身を任せたら逆効果ですわ。私が言った言葉、覚えていますわよね?頭を使って、常に相手の先を読みながら剣を振る。そうしなければ、誰にも勝てませんわよ。」
「確かにな。思い返してみれば、美咲も師匠も、力を大振りに使っていなかった。オレの剣筋を読んで、その先に剣を当てていたのか。」
勉強になった。
恐らくこの教訓は、絶対後にになって響く。
「ありがとな、琴葉。」
「……名前呼びで呼ばないで下さいます?」
「え?なんでだよ。」
彼女は照れていた。
天然なオレには、何故照れているのかあまり理解出来なかったが、少しクスッと笑ってしまった。
「ありがとな。俺、これから強くなれるように頑張って努力して、いつかお前にリベンジしてやるからな!」
「受けてたちますわ。その時は手加減などしませんので、ご容赦を。」
その会話後、筋トレに戻り自主トレを続けた、
その後、彼女と別れ自室に戻ると、筋トレと激戦で疲れが溜まっていた。
ので、このホテル名物の露天風呂に入りたくなった。
「────おお、広いなおい。」
「確かに、昨日も入ったけどやっぱり広いよな。」
「そうだな……ってえ!?なんでお前居んの!?つか全然気付かなかったわ!!」
一人で来たつもりだったが、
一言独り言をつぶやくと横から割って入ってきた。
猿、否、翔也だった。
「なーんだよ、水くせえな。温泉目の前にして水くせえっていわせんなよな。」
「お前がいきなり来たからだろ!ったく、何しに来たんだよ。」
「何しにって、温泉入りに来たに決まってんだろ?俺だってお前らほどの戦いはしてなくても、疲れてんだから。」
「それもそうか、じゃあせっかくだし一緒にまた入ろうぜ。」
「おう!賛成賛成!!」
しっかり身体を洗った後、湯に浸かった。
変わらず天然温泉の効果は凄まじく、疲れは一気に吹き飛び、気持ちが落ち着く。
「───ふう、気持ちいいなぁ。」
「だな、…つか、お前らほんと凄かったな。あの戦い、見てる側はすげぇシビれたぜ?」
「でもオレは負けた。完敗だったよ。」
「んや、そんな事もねえんじゃね?ほら、腹に一発当ててたし、最後トドメ刺す前までは結構いい動きしてたし、」
「そうかな、べらぼうに攻めて少しでも相手を混乱させたかっただけだよ。」
「あの動きに合わせて攻められる人間が少ない事くらい分かってんだろぉ?小柳は謙遜しすぎなんだよ。 負けた事がそんなにマイナスなのかよ。」
「負けは負けだし、さ。」
「俺は勝者より敗者の方が成長できるって思ってんだよ。だって、勝者は "勝ち" という名誉を受け取るだけで、成長はあまりできないだろ?それに比べて敗者は、悔しいという感情を覚えて、自分のダメなところを修正できる。そっちの方が何百倍も良くねぇ?」
「……翔也。」
その言葉は重くのしかかった。
事実だったからだ。
何も言い返せない。彼なりの励ましなのだろうと感じた。
「だーかーら、お前がそんなに気に留める必要はねえっつうの。次やり返せばいいじゃねえか。」
「……そうだよな。確かに。まさかお前にここまで励まされるとは思わなかったよ。」
「当然だろ?だって俺ら、"トモダチ" だろ?」
「ふふっ、あぁ。友達だ。これからの第三次試験も、お互い乗り越えような。」
「おう!絶対負けんじゃねぇぞ!」
グータッチを交わした。
俺は友情の素晴らしさを再認識できた。やっぱり友がいるのといないのとでは明らかに違う。
俺は、翔也に救われた。
俺が強くなる為の素材は、みんなから貰った。
師匠、琴葉、翔也。
色んな人からの助言を聞いて、オレはもう一歩二歩、成長出来た気がした。
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