第二十三話『第二次試験』

───それでは、第二次試験の説明をします。


「ここにいる75人の皆様には、この場内闘技場で、一斉にバトルロワイヤル方式で戦ってもらいます。」

「では早速ルールを説明します。使用する武器は、木刀のみとなり、戦闘不能になるか、こちら側の判断で続行不能になるまで戦ってもらいます。生き残った上位30人が第三次試験に到達できます。もちろん、殴りや蹴りなどを使っても構いません。」


「なんでもありの場内乱闘ってとこか。」


「おもしれぇ!ワクワクしてきた。」


この生き残った75人に、怖いなどというマイナスな感情を抱く人間は一人もいなかった。


「────では、木刀を配布します。」


「なぁ小柳、俺ら背中守り合わね??」


「別にいいけど、俺もプロじゃねえから守りきれねえかもだぜ?」


「そりゃ俺も同じだっつうの。」


「ちょっと、うちは?」


「お前は頑張れ」

「お前は頑張れ」


「お前ら後で覚えてろよ。」


では、第二次試験、開始!!!




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




「こりゃ本気で危ねぇな、後遺症が残った人がいるってのも納得だぜ。」


会場内は大盛り上がりしていた。ガヤガヤした雰囲気の中、俺は来た相手を木刀で薙ぎ倒していった。

正直、美咲の方が何百倍も強い。

だから一気に3人来ても相手にできた。

因みに、脱落した人間はロボットが回収しに来る。そのため間違えてロボットを殴ってしまいそうになる。



一方その頃──────



「ほいっ!ふぃっ!よいしょっとぉ!!らくしょーらくしょー!お前ら全員でかかってこいや!!」


あっちも余裕そうだった。

5人まとめて相手にしてた。

正直俺が背中を守るまでもなかった。

身体能力が化け物レベルなため、剣を柔軟に避けて木刀を振り当てていた。


「危なっ!無理無理!おいお前!!今このうちに向かって剣振ろうとしたな!!100年早えよ!!」


伊織も元気そうだった。

余裕では無さそうだが、何とかなっている。

今の所全員ノーダメージで来れている。


「────いい感じだね、今回の参加者。」


第一位と第二位が、上から観戦していた。


「あぁ、今回は皆腕がいいな。これは期待出来そうだ。」


「やっぱ蓮も一番期待してるのは深海だろ?」


「まぁね、彼の身に不幸があるにも関わらず、あそこまで動ける人間はそうそう居ない。相当な精神力を持っているんだろうね。」


「君がそこまで言うなんてね。第二位の僕ですらそんなに言われたことないのに。」


「深海は、いずれ第一位になれる人材だよ。」


「いずれ、僕たちと戦うかもしれないね。僕も頑張って鍛錬しないと。」


「あぁ、楽しみだ。でもこの討伐士という世界は残酷だからな。いつ落とされるか分からない。」


「───君の、かつての親父がそうだったように?」


「……口を慎め第二位、僕の父は神蔵源治。今の団長だと言うことを忘れるな。」


「すまない、そうだったね。」



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



────── ふぅ、ざっと残り40人ってとこか?あと10人倒せば……!


数分が経過して、あと残り僅かという所まで来た。

今の所少しダメージはあるも倒れるほどのダメージは無かった。


「流石に疲れたな、ここまで来たら。」


「うちも、もうヘトヘト、いつ終わるの…?」


敵は待ってくれない。

そういいつつも襲いかかってくる。

だがここまで残っている人達はそう簡単に倒れてくれない。

一人一人倒していくのが精一杯だ。


「くそ、もう体力が……。」




その瞬間────────




一瞬、稲妻が走ったかのように動き、残っていた五人を一気に戦闘不能にした───


「……なんだ!?今、見えなかった。」


「この速さ、異次元だぜ……。」


「やだ、うち隠れてようかな…。」


木刀なのにこの威力……、

恐らく、俺らよりも強い。驚きを隠せずにいたが、何か違和感があった……。


「でも……なんか見た事あるような。でも知り合いにあんな奴いなかったよな…」


彼女が俺の近くに来た。

目をじっと見て。話し掛けてきた。


「────自販機の時以来ですわね。」


「…………あ!!!あの時の小銭拾ってくれた人!!あ、あの時はどうもありがとうございました。」


「こんな所で感謝してる場合か!」「育ち良いなおい!!」


2人からツッコミが飛んできた。


「ええ、いいのですわ。それよりも、やはり貴方とはご縁がありましたのね。"小柳深海くん" 」


「え、なんでオレの名前を……まだ、自己紹介すらしてないのに。」


「あら、そうでしたわね。申し遅れました。ワタクシ、『川崎琴葉』と申します。」


脳内に溢れ出る記憶の数々、

その数々の記憶の中で "川崎琴葉" という名前が脳裏に浮かび上がってきた。


そう、あれは幼稚園の頃。

愛菜にイチャもんを付けていたお嬢様の名前、川崎グループの令嬢にして、両親共々モンスターペアレントという愛されお嬢様。


その "川崎琴葉" が、今目の前に居る。


「─────なんで、お前が…ここに。」


「あら、覚えてくださっていたのですね、嬉しいですわ。と、昔話はこの辺にして。」



剣を構え、彼女が一言。



───私の初恋を奪った愛しき殿方、ワタクシと、真剣勝負をしましょう。


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