第二十話『第一次試験』

エレベーターのドアが開いた。


そこには、ジャングルのような木々が生い茂り、よく見ると、空中に足場が存在し、左右に棒が振られ、当たったら間違いなく地の底に落ちる、まさしく空中アトラクションの様な部屋だった。


「すげぇ …… しっかりアトラクションじゃねえか。」


数が多すぎる為、総勢600人を200、200、200で分けて行う。1チーム50人で終了するらしい、つまりこの中の150人しか生き残れないということだ。


「では、全員一斉にスタートしますので、スタートラインに集合してください。」


「全員集まりましたね。では、再度ご説明します。このアトラクションエリアは、足場から落ちたら即終了です。それと同時に、命綱などは存在してませんので、自分の身は自分で守ってください。」


「……この高さから落とされたら、間違いなく軽傷じゃすまねぇぞ……。」


地上から足場の高さはおよそ15〜20m位の高さがあり、命綱無しだと思うと骨折は覚悟しなければいけない様な高さだ。


「────怖いよ、」「これ、死ぬくね?」「大丈夫か、これ。」


野次の声が聞こえてくる。

そう思うのも当然だろう、昔の俺なら、同じような事を思って言ってたと思う。


でも、何故だろう。全く怖くない。

だって、ただ目の前にあるゴールに辿りつければいい、それだけじゃないか。

落ちなければいいだけの話だ。と自分に自信をつけた。


「─────それでは、スタート!!!」


一斉に皆が走り出した、少し走るともうアトラクション部分になっていた。

まるでSASUKEの様なアトラクションもあり、多種多様なものがある。


ゴールまで少し長いのが気になるが、慎重に一歩一歩進んで行った。


「うわぁぁぁ!!」「助けてぇ!!」「怖いよ…」「もう無理……」


後ろから声が聞こえる、落ちる男性の声、スタート付近で怯える女性と子供、その声が聞こえる度、押し潰されそうになる。


だけど、その押し潰されそうな気持ちを抑えて、信じてくれてる人達の顔を思い浮かべて、ゴールまで目指していく。


「─────ふっ、ほいっ、らくしょーらくしょー!!」


開始から数分、そろそろ半分まで来た。


「だんだん慣れてきた、これなら俺が鍛錬してた山の方が不安定だったし。────つかあいつはえぇな、淡々と進んでんじゃねえか。」


現状で言うと、俺の前には一人しかいない。

その1人が恐ろしく早い。まるで猿みたいな身のこなしで、すいすい進んでいく。


「あいつ何者なんだ、まるで自分のテリトリーかのように把握して進んでやがる。」


自分も負けじと食らいつくが、どんどんと距離が遠さがっていく。

後ろを振り返ると、最初の人数よりだいぶ減っていた、見た感じ50人も居なかった。

それほど、このチャレンジは過酷なのだと痛感した。それと同時に、俺には下を見る勇気はなかった。



更に数分後─────



「うっしゃ!一位〜!!」


一人目のゴール者が現れた、さっきの猿みたいな人だった。

それに続いて、自分もゴールした。


────はぁ、はぁ。最後、緊張した。


最後の難関として、反り立つ壁があった。

だが皆さんが想像する反り立つ壁よりも、何倍も高さがあり、一回落ちたら終了だ。そのまま床が抜けて落下する。


俺は思い切り走り出し、中間ら辺で思い切り蹴り上げ、自分の体を浮かせて手を反り立つ壁の最上部に掛けた、そうして自分の足を浮かせて、腕の力で登った。


正直これが出来る人は中々居ないと思った。

これが第一次試験だと思うと、先が思いやられたが、こんな所でくたばってられない。


「お!お前が二番目か、すげぇな。」


猿みたいな男が声をかけてきた。

勘違いしないで欲しいのが、俺は顔が猿みたいだとは言っていない。身のこなしの事だ。


「あぁ、お前もすごかったじゃん、すらすらクリアしててさ。」


「いやぁ、ずっと練習してたからさ、体の使い方とか、身のこなしとか、意外と練習すんの難しいんだけど、頑張ったぜ!」

「あ、名前聞いてもいいか?これから一緒に討伐士を目指す仲間として!」


「小柳深海だ。よろしく。」


「小柳か!宜しくな!俺は桜木翔也、気安く翔也でいいぜ!」


暑苦しい奴だ。

ここに来るまでの愛菜を思い浮かべる程のうっとおしさだった。

でも、悪い奴では無さそうだなと直感的に判断出来るほどの、良いやつオーラ全開だった。


と話しているうちに、クリア者が続々と現れてきた、そして数分後、試験が終了した。


──────クリア者数は、28人。


200人の中で、28人しかクリア出来なかった第一次試験、その結果を見れば、どれほど過酷で、どれほど難しいかがよくわかる。


「お疲れ様でした。ここに残った28人は、第二次試験への参加資格を勝ち取ったのです。まずはおめでとうございます。これから皆さんをホテルに案内します。今日はゆっくり休んで、明日の試験に備えてください。」


「うっし!なぁ小柳、ホテルで麻雀でもしねぇ?俺最近ハマってんだよ!麻雀!」


「お、おう。別にいいけど、俺あんまりルール知らねえよ?」


なんて会話を交わしながら、別館最上階のホテルへ向かった───────





『第一次試験合計突破者数』75人─────



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