第五話『生きにくい世の中』

「────じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。これから任命式があるんだ。」


「竜馬、色々ありがとな。タダで情報教えてくれたり、終いにはお金まで…」


「気にしないでくれ。実は僕も18の代でね、君たちも18歳だろ?ふふっ。同い年のよしみって事で、あまり気にしないで。」


「本当に、ありがとうございました。その、お父さんの事は … 。」


「ああ、その件はまた別日に招集要請がかかると思うから。その時は出席してくれるとありがたい。」


「…分かりました。」


「じゃあ、僕はこの辺で。」


言葉を言い残し、ビュン───と風を斬る音が聞こえ。

その瞬間、彼は空中を飛んでいった。あまりにも近代化、というか同じ世界にいる気がしなかった。


公園での一件があった後、街を一通り案内してもらった。どうやらこの街は、俺達の世界で東京に位置する場所らしい。今は市の名前が変わって、『東商』という名前に変わっていた。

そしてもう一個思った事がある。

それは、意外と "異種族" と呼ばれる人たちは多く存在しているという事。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



愛菜がトイレに行きたいと言ったので俺は一人外で待っていた。するといきなり、一人、いや、一匹の異種族が話し掛けてきた。


「 ────う"ぉ、気持ち悪ぃ … ぁ"? オイ 、テメェ何俺の事見てんだァ ? あぁん?」


いきなり肩を掴み話し掛けてきた。所々から酒臭い匂いが漂ってくる。正直目だったので一瞬見てしまったが、見つめた訳ではなかった。


「いや、見てないです。」


「見てないです。じゃねえんだよ。俺が見たって言ったら見たんだよテメェはよぉ?」


こいつは某四次元ポケットが出せるアニメに出てくる、ジャイなんとかの生まれ変わりかなんかなのか?と思ってしまうほどの自己中発言に、どう反応していいかわからず話を聞いていた。


「俺はなァ?オレ・オレオって名前なんだよ、テメェ俺の名前知らねぇなんて言わねえよなァ?そこそこ有名だからなァオレ。」


「───お菓子みてぇな名前だな。」


反射的に言葉が出てしまった。しまったと思って聞いていないでくれと願ったが、自分より身長が高い異種族は上から見下ろすようにガン見していた。


「ぁ"?テメェいまなんつった?」


完全にキレている。お金は無いですと言おうか迷っていた時、ベストタイミングだった。


「───いやぁすまない。少し席を外しすぎたね。… あれ、そこの方は?」


竜馬だった。竜馬がちょうどいいタイミングで戻ってきてくれたおかげで助かる、と説明しようとした時。


「と、討伐士…チッ、テメェ、覚えてやがれ!!」


と、お決まりのような捨て台詞を吐いて逃走してしまった。間違いなく討伐士を見てビビって逃げたのだろう。


「あれ、もしかしたら彼は、盗賊だったのかもしれないね。」


「盗賊?」


「盗賊というのは、討伐士にも治癒術士にも機工術師にもなれなかった人間全てを指す言葉さ、正直可哀想ではあるんだけどね。」


「なるほど、職を持てなかった人たちを全て "盗賊" で一括りにしちまうのか。」


────正直この世界は、昔の世界よりも。


生きにくい世の中なのだろうと。直観的に思った。

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