第四話『一輪の花』
────君たちを殴った人間は、"この世界の人間" だ。そしてその人間は、君たちに "最悪の運命" を託したんだと、僕は考えてる。
この言葉を聞いた瞬間様々な思考が頭を駆け巡った。そしてそれがひとつにまとまったかのように、彼の見解を聞いた。
「この世界の人間、というのは名の通り、"未来に居る人間" って事だ。そしてもうひとつの最悪の運命。これは、僕達討伐士が長年追っている極悪集団『香良洲』が編み出した兵器を用いられたと思っている。」
「香良洲が作り出した物は、"最悪の未来が訪れる" という運命を書き換える物のレシピだ。私たちが分かっているのは。そのレシピがとある機工術士に渡された事により。兵器が完成した。という情報まで。そしてその機工術士こそが────」
「私の…"お父さん"…?」
「その可能性は大いにあるだろうね。」
「ちょっと待てよ。その機工術士はこの世界の人間なんだろ?だったらなんで過去に行けてるんだよ。本当にコイツの父親なら、今この世界には居ないはずだろ。」
「『香良洲』は、この世界のことわりを破り、様々な犯罪に手を染める極悪集団だ。もし仮に人体実験として先程の兵器を作った機工術士が兵器を使われ最悪の運命を背負わされた状態で過去に捨てられ、その様子を実験として捉えていたとするなら。」
「…そんな。お父さん…そんなに色んな事背負ってたの…。」
「あくまで仮説だが、大まかは正しいはずだ。『香良洲』が今勢力を強めているのも現状だしね。」
「じゃああの時。最悪の運命が来るって思った親父さんは、気が狂ってあんな奇行に走ったって事か?」
「僕の考えは少し違うな。…きっとお父さんは。君たち、あるいは君に、"最悪の運命の犠牲者を救って欲しい" と思ったんじゃないかな?」
「…私に…?」
正座で座りこみ、涙を隠す余裕が無くなる程に泣いていた彼女に、そっとハンカチを渡しながら彼が声をかける。
「一個一個の仕草までイケメン主人公じゃねえかよクソ。」
ぼそっと呟いた。聞こえないほどの声量で
「嗚呼、おそらく君のお父さんは。最悪の運命を呼び起こす装置を作ってしまったことを後悔し、君たちに、最悪の運命の呪縛をといて欲しいと思ったんだと思う。君たちにならできると、そう判断したんじゃないかな。」
「とはいえ、君のお父さんも君たちを危険に晒すことを相当悩んだはずだ。だって君はいわば、最悪の運命を背負わされた中に咲いた、世界で一番可愛く綺麗な、一輪の花なんだから。」
「キザセリフまで完璧だなコイツ。」
またぼそっと呟いた。
「だから君たちに運命を託し、この今いる未来へと送った。君達を未来へ送った装置はきっと過去の技術を上手く駆使して作ったんだろう。相当凄い発明品だ。」
「だからってぶん殴る事ねえだろ。」
またまたぼそっと呟いた。
「ううっ … おとうさん、わたし … がんばるよ。どんな事があっても 、お父さんの意思、受け継いだから … 絶対、絶対、最悪の運命を、最悪の運命の犠牲者を、守って、守り抜くんだから … 。」
「私達討伐士も全力で協力しよう。良かったら君たちも、私たちに協力してくれないか?君たちの力が必要なんだ。」
「… 分かりました。」
と、硬い決意を固めた2人を少し遠目から見ていた彼は、とある事に気が付き、ぼそっと独り言を呟いた。
────じゃああの親父さんの最後のセリフ
「お前らがああああああ、犠牲になっちまえぇェェェェェェェ!!!!」
は、何だったんだ…?────────
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