第三話『最悪の運命』
「──なにか困り事があるなら、僕で良かったら話を聞かせてくれないか?」
同い年くらいの若い青年が話しかけてきた。正直いきなり話しかけてきて不安な気持ちもあったが、今は彼に縋るしか無かった。
そんなこちらの状況を悟ってか彼が口火を切った。
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は折木竜馬。通りすがりの『討伐士』だ。」
討伐士───
その名は先程聞いたが。自分のイメージだと依頼を受けてお金を貰う職業というイメージだった。そのため不安な気持ちが拭われることは無かった。
「討伐士って事は、お金を貰うんだろ?俺たち、お金持ってないんだけど。」
「ははっ、流石に僕もそこまで薄情な人間では無いよ。行く宛てもないほど困った人への助けくらいタダでやるさ。何を困っていたんだい?」
「絵に書いたような爽やかイケメンキャラじゃねえかよおい。」
漫画の中でしか見た事ないような爽やかイケメンキャラに圧倒されるかのようにぼそぼそと今までの事情を全て説明した。
「──なるほど、つまり君達は200年程前の過去の世界からやって来て、今行く場所がないって事か。」
「ああ、それで聞きたいんだけど。俺らはこれからどうすればいいと思う?」
「うーん、そうだな。ひとまず、この世界の説明をしておこう。」
「この世界。つまり200年の間劇的に変わったことと言えば。近代化と、職種の変化だ。近代化は、見てもらえれば分かると思う。大事なのはもうひとつの職種だ。昔の時代の人たちは、色んな職種があると聞いた事がある。だが今は、ほぼ指で数えられる程に限定されている。まずひとつが、昔の言葉で公務員と呼ばれていた人達。そして新たに増えた職種でいえば、僕たちのような『討伐士』と、傷を癒すことを専門にしている『治癒術士』それから兵器や罠などを開発し売り出す『機工術士』がいるんだ。」
「なるほど、つまり妖怪ウォッチバスターズで言うところのアタッカーとヒーラーとレンジャーが職種として存在しているって事か。」
「何?その、妖怪なんちゃらばすたーずって、分からないけど、なんかかわいい!」
「そうだ、そしてこの世界は『警察』や『救急隊』が機能していない。一般人と変わらないって事だ。その人たちに助けを求めでも何もしてくれないだろうね。」
「そしてもう一個が、生きてる種族が人間だけではなくなったという事だ。この周りは人間が多いけど、200年の間に様々な種族が進化していってね、例に上げると、トカゲと人間のハーフとか。そんなのが生まれるようになった。」
「一個聞いていいか、その別種族は、日本語を喋るのか?」
「ああ、基本的に日本語だが。英語を喋る人もいれば、フランス語を喋る人もいる。」
「…大体この世界のことは分かった、それで俺たちは、どうやって現実世界に帰ればいい。」
「そこについてはよく分からないが、一つ考えていた事がある。」
彼から発せられた言葉を聞いた瞬間、驚きを隠せなかった。
頭の中で様々な思考が巡り、全てを理解するのに時間がかかっていた。
────君たちを殴った人間は、"この世界の人間"だ。そしてその人間は、君たちに"最悪の運命"を託したんだと、僕は考えてる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます