第二話『先の見えない現実』
意識が朦朧としている、頭が痛い。何かで殴られた?いや、鈍器のようなものを持っていた?先に彼女が殴られ。自分も殴られた?いや、それだとしたら?
「──シン… くん … シン … く 、ん 。」
頭の中で聞き覚えのある声が掠れて聞こえる。俺はその声に答えようとも答えられない。
頭が痛い、脳が揺れている、気持ち悪い、吐き気がする、気持ち悪い、汚い、最悪、無理、きつい、どうしよう、やばい、眠い、起き上がれない、無理、死ぬ─────
「シンくん!起きて!!」
バチン!音が聞こえると一気に意識が戻った。と同時に痛みと頬の暑さを感じた。目を開けると彼女の顔が見え。少し泣いているようにも見える。
「…いてて、」
俺は仰向けの状態から起き上がり、周りを見渡した。
その瞬間、頭の中で理解した。
この世界は─────────現世では無いことに。
「なんだ…ここは。…いかにもって感じの未来的テクノロジー感。SF映画で出てきそうな物ばっかりだな。車は宙に浮いてるし、変なレーンは走ってるし、やりたい放題だな。」
「というかお前、今俺の事ビンタした?なんかすげぇ痛ぇんだけど?頭殴られた後にビンタするか普通。脳揺れて死んだらどうするんだよ。」
「し、仕方ないじゃない!全然起きないし、うなされてたし。怖かったから。仕方なく、えいっ!って…」
「えいっ!って、じゃねえよ。起こし方ってもんがあるだろうが。…ったく。んで、ここの場所に見覚えは?」
「ある訳ないでしょ。私だっていきなりお父さんに殴られて…というか、あれは本当にお父さんだったの?」
確証がある訳でもないが、あれが父なのか父じゃないのかどちらかにせよ。明らかに尋常では無かった。
「わからない。だが、俺は一個気になる点がある。」
「なに?気になる点って。」
「──無くなってる。… 俺とあずさちゃんの大切なチェキがぁぁぁぁ!!!無くなってる!!!!!」
そう、ポケットの中に入れて置いた大事なチェキが無くなっていた。盗られたのかもしれないと。警察に電話しようとした時、携帯の画面を見た瞬間────
「……2280年…って書いてある。ここの画面に。」
「確かに、じゃあここって、本当に未来の世界って事?」
「確信は持てないけど、恐らくそうかもしれない。じゃあ今警察に電話したらどうなるんだろうな。」
何もすることがない、取り敢えず警察の番号110に電話をしてみることにした。
「あ、もしもし。警察ですか?」
「はい、何か用っすか?」
態度が明らかにやる気がない感じだった。いつもなら『事件ですか?事故ですか?』と聞いてくるはずなのに。
「あの、ここって、2280年ですか?」
「そうですよ。そんな当たり前のこと聞かないでください。もし何かして欲しい事があるなら。私どもじゃなく、『討伐士』に依頼してください。まあ金は持ってかれるでしょうけどねぇハッハッハ。」
随分と不気味な笑い方をしながら電話を切られた。一方的に電話を切られ、2人は呆気に取られていた。
「警察が機能してないって事ね。その討伐士っていう人達が警察代わりになってる可能性が高い。」
「お前の頭の良さがここになって生きるとは思わなかったよ。正直パートナーにしては上出来すぎる。」
辺りを見渡すと、今2人がいる場所は公園のようだ。とは言っても自分たちの知ってる公園とは違い、遊具は無く、平坦な草むらが広がっている。トイレは完全個室な上に、立ちションする男子特有のスペースが無くなっていた。
「公園まで近未来化してんのかよ。」
周りの状況に少し興奮気味になっていると、隣で不安そうにしてる彼女が。
「私たち、これからどうなるの?」
と声をかけた。何とか彼女の不安を取り払おうと立ち上がり。
「大丈夫大丈夫、なんとかなるって。とりあえず宿を探そう。」
「でも、私たちお金もってないよ?」
「…確かに。…どうしよう。」
完全に先を絶たれた二人、窮地に追いやられたと言ってもいい。2人とも知らない環境で不安になってしまっていたところに───
──なにかお困りかな?そこのお二人さん。
俺達と同じくらいの青年が声をかけてきた。
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