古代から伝わる


「えーっと恭一郎君…考え直してくれた?」

「お断りです」


ジムに着いてスパーリング中、後ろの方でマネージャーに再度問われるが、キッパリと断る。


「澪以外の子と一緒になる気はありません」


「無駄っすよ鬼塚さん!恭ちゃんは嫁さん一筋だから、他の花人とお見合いなんてする訳ないない!」

「恭ちゃんが嫌だと思った事は、梃子でも動かない堅物なんだから嫁さんの成長を見守るしかないですよ」


同じジムで休憩中の先輩達が、マネージャーの鬼塚さんを揶揄うように、俺に賛同してくれる。


「とは言ってもねぇ…相手は5歳年下の花人の女の子じゃないか。その子が卒業するまでに持つとは思えないよ」

「大丈夫です。神格化に伴う血への忌避感への対策はしています」

「まさか根性でどうにかなると思ってない?根性論が通ずる程、本能とは甘いもんじゃないよ」

「んー流石にそれはそうだけど…やっぱりお付き合いしてるんだから、キスしてるの?」

「それは不味いよ!相手は学生だよ!それがマスコミに知られたら、恭一郎君のスポーツ生命終わりだよ!!」

「…」


流石に誤魔化し切れないと思い、俺はトレーニングの手を止めて鬼塚さんに振り返る。


「婚前交渉は一切してない、それは誓えます」

「なら良かった…良くないけど」

「…変わりに、昔ならではの方法を使っています」

「古代?」

「鬼の角は薬として飲むと、滋養強壮の効果があるって知ってますよね?それで古代や江戸時代じゃ高値で売買されていた事も…」

「あー昔の人って栄養失調気味だから、鬼の角を粉末にして飲めば何でも治る万能薬として扱われていたって聞いた事あるなぁ」

「それと学生の時の授業で鬼人の角を飲ませて、花人の花を飲むと婚姻の誓いになるとも…それを利用してます」

「あー…あっ!?つまり恭ちゃん、自分の角を粉末にして飲ませて、澪ちゃんの花を食べてるの!?」


先輩に改めて言われると恥ずかしくて、思わず頬が染まるのを感じる。


「えっ澪ちゃんそれ知ってて角飲んでるの?」

「…澪から了承は得てます。建前は母親が病弱だったから薬として飲んでいるって事にしてるけど、高校卒業して恋人になるまでの婚前交渉変わりに飲ませ合おうって事になりました」

「あーそれなら確かにキスもしないで、恭ちゃんの遺伝子を澪ちゃんに渡して、花人の蜜を食べる事が出来るわぁ」

「現代の法に一切触れていないから、確かに万が一知られても咎められる事はないなぁ」

「そういう訳ですんで…他の花人との見合いは無しでお願いします」

「………はぁ~、そこまで真剣に交際してるのね~恭一郎君」


そこまで言って漸く理解してくれたらしい。


「けど念の為に言うけどその事もマスコミには知られない様に頼むよ、アイツらの事だから幼気な女子高生を騙して飲ませたとか、有ること無いこと書くのが仕事なんだからね」

「分かってます」

「にしてもそうかぁ、滋養強壮の効果があるのかぁ。体が弱い俺の嫁さんにも飲ませたら効果あるかな」

「念の為にやってみたら?」


…本当は墓の中まで秘密にしたかったが、他の花人と見合いしない為にも暴露したけれど…澪との行為の事、主に子供ですらしているキスすらしていないなんて知られて恥ずかしかった。


俺はその気持ちを誤魔化す為に激しくスパーリングする。

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